ひでやん

十二人の死にたい子どもたちのひでやんのレビュー・感想・評価

2.9
キャストが豪華なのに重厚感がなく、良く出来た脚本なのに説得力がない。

命の選択について密室で論争した結果、強力な死への願望が生へと向かう展開を期待したが、殺人犯を探すというサスペンスが予想外で、思ったのと違った。『十二人の怒れる男』のオマージュなんだろうね、このタイトル。あの傑作は、土砂降りのち快晴という精神の浄化がラストにあったが、今作は「なんとなく雨のち、なんとなく晴れ」という印象。

見えているのに見えない伏線を張り巡らせるのではなく、「誰が何のために」という丸見えの伏線が散らかっていて、それを拾い集める。集いの場に来た順に手にする番号札がミスリードになり、時系列が隠れる構成は面白く、楽しめた。

登場人物が12人もいるとキャラ立ちが重要で、例えばメガネ君やぽっちゃり君、不真面目や無口という個性豊かなキャラが覚えやすい。そのキャラ設定の中に「自殺の理由」があるように思えて、死への強い願望が感じられなかった。死にたい気持ちがいまいち弱いので、それが「生きたい」という気持ちに変わっても弱い。

さざ波のようなラストで、清々しさがなかった。
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