小松屋たから

十二人の死にたい子どもたちの小松屋たからのネタバレレビュー・内容・結末

3.1

このレビューはネタバレを含みます

地上波テレビ局制作、しかも厚生労働省とタイアップ(観たがる中高生の親を安心させて動員を増やしたかったのでしょうか)、という時点で、もちろん「バトル・ロワイアル」みたいなことにはならず、きっと誰も殺されず自殺もしないだろう、ということは観る前から予想できてしまう。

だから、どんなメンバーが集まって自殺の是非についてどんなギリギリの会話劇を繰り広げてくれるかが見どころだと思っていたが、冒頭から、子供たちが、そもそも「自殺したいから」というよりは、「自殺をやめる理由を誰かに見つけて欲しいために」来た、という風情で、
物語もあっという間に、本題から外れたミステリーの謎解きに主眼が移り、密室感も無いことが、意外でもあり、ちょっと残念でもあった。

「十二人の怒れる男」を期待すると拍子抜けかも。ちなみに原作は読んでいません。すみません。

結局、「自殺」というテーマは置き去り気味かな…
ラスト、みんなが救われたような笑顔を見せていたのにも、それぞれが抱えている事情が特に解決されたわけではないのにこれでいいのかな、という違和感があった。眼前の謎は解けたかもしれないけど、人生の答えは何も出てないよ、と。

ただ、この人数のキャストそれぞれに、この尺内できちんと一人ひとりキャラ付け、役割分担がなされていたのは脚本家、監督の手腕だと思う。
杉咲花を筆頭に人物造形は漫画的でセリフも過剰だが、それは、映画のターゲット層が若いことを考えての狙いだろう。自殺したい理由が人によってはかなり軽いが、今の時代のリアルかもしれない。

でも、だからこそ、謎解きのエンタメ要素と「自殺はダメだよ」というメッセージがもっともっとリンクしていたら意義ある名作になったかも、と勿体なく思えてならない。大型シネコンではない渋谷の劇場が、いつもよりかなり若いお客さんで埋まっていたので、尚更だ。