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いつか家族にのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

いつか家族に(2014年製作の映画)
3.3
ジョンウさんが監督と主演を務めた作品。
原作は中国の小説ですが、1953年 朝鮮戦争が休戦になった頃の韓国が舞台となっています。

息子のために血を売る話というザックリとした内容だけ聞いてたので、シリアスな話かと思ってたら、途中まではコメディタッチで、実は長男が血が繋がってなかった事を知ってからも、あまり重くならずに描かれるのですが、ちょっと今の時代の価値観で見ると、いくらジョンウさんでもこのオトン酷すぎやん!とめちゃくちゃ複雑な気持ちになります。

ジョンウさんが原作小説を読んで自ら映画化した作品がコレなん?と思うとかなりモヤモヤするんですね。
もちろん可愛がってた長男が、実は自分の子ではなかったとわかった時の心情なんて簡単には想像できないし、その苦しみや悲しみ、怒りなんかの葛藤もそれは大きいとは思いますが、お兄ちゃんが可哀想すぎていくらジョンウさんでもこのお父さんに共感できなさ過ぎてゲンナリしました。

しかし!この腐れオヤジを嫌悪したがために終盤は泣けるんですよ。
もう演技派のジョンウさんの真骨頂です。
このジョンウさんを見たかったんです、ありがとう!という気持ちになりまして、最後にはモヤモヤを解消してくれて良かったです。

それにしても、戦後でみんなが貧しかった時代だったとはいえ、血を売るっていう事が手っ取り早い金を得る手段になってた事にも驚きます。

それに、デモとか祈祷とか、これまで見てきた韓国映画で描かれてた事も出てくるので、韓国民主化運動を描いた「1987」などの作品群やファン・ジョンミンがヤバイ祈祷師を演じた「哭声」などを思い出したりもして、韓国のいろんな側面を感じる事ができました。

また、「お嬢さん」「暗殺」「悪いやつら」でもジョンウさんと共演してるチョ・ジヌンや、同じく「悪いやつら」でジョンウさん演じる若頭の右腕役をぴんから兄弟みたいな風貌で演じて爪痕を残したキム・ソンギュンや、「アシュラ」「息もできない」のチョン・マンシク、「トガニ」の校長など、脇を固めるのが印象に残る顔力の役者陣なのもうれしい限りです。

なんと言っても長男のイルラクが健気でたまらん。
いい顔してるからこれからいろんな映画で活躍しそうです。

ズタボロになるジョンウさんに涙しつつ、めちゃくちゃ肉まんが食べたくなる作品でした。

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