木元

居眠り磐音の木元のネタバレレビュー・内容・結末

居眠り磐音(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

まあまあ面白かった。物語は2部構造になっており、序盤で主人公が浪人になるまでの過程を、中盤以降は江戸に流れてからのお話となっている。『用心棒日月抄』(ドラマ版は『腕に覚えあり』)を思い出した。ヒロインが故郷にほっぽり出されたりするあたりも似てる。
この手の構成で当然期待するのは、前半の事件が後半と有機的に絡みあい、「なるほどそういうことだったのね」と気持ち良さを得ることだが、このお話に関してはそういう快感は特にない。いちおうほのめかされはするが、それだけ。
シーンがぶつぎりで、見せたいシーン、差し込みたいシナリオ優先になっているのか、唐突に主人公が過去回想をして江戸のヒロインに悲劇を語ったり、いきなり悪役が登場したりと没入感を削がれることがままあった。
悪役もあまり魅力的じゃない。ぽっとでの凄腕剣士たちがそれを上回る腕の主人公にやられるだけでなんだかなあという印象を拭えない。それこそ序盤の幼馴染を最後まで引っ張っても良かったんじゃないかという気も。
そもそも金貸したちがあっさり主人公の罠にはまって破滅したりするのも、それはどうなんだと思ってしまった。知力・武力共に主人公一人ですべて解決できてしまって、うーむと思った。居眠り感も全然ないし。
じゃあ全然つまらなかったかと言えば別にそうでもない。殺陣は良かった。木村文乃もとても可愛い。
なにより良かったのは、故郷にいたヒロインとは決別――きっちり振られたことだ。ヒロインは脱藩してしまった主人公を待とうとするのだが、ない袖は振れないので結局遊女になってしまう。その部分だけ見ると悲しいのだが、いちおう江戸で成功を収め、泣き崩れる主人公の前を通りすぎるのを撮ったのは良かった。好き勝手にやる男を健気に待って帰還してハッピーエンドなんてやられたらさすがにブチ切れてたところだ。
もちろん遊女になって成功を収めて――という件を良かった良かったで済ませるつもりはない。あくまでも、金銭的余裕がなくなったがなんとか道を切り開けたところが良かったという話だ。
なんにせよ悪くないお話でした。でももう一度は見ないかも。
2023.10
木元

木元