朝倉

ホットギミック ガールミーツボーイの朝倉のレビュー・感想・評価

3.3
「邦画に風穴を開ける新進気鋭作品」
私たちの認識している邦画であることは間違いないんだけど、何かが違う。なんかもう、邦画という枠組みにはめようとも突然変異をし続ける木の板のように、もう"ホットギミックはホットギミックっていうジャンル"。そう思うほどに、手法はもちろん世界観全てが、常に前頭葉を刺激し続けてくる。

印象に残ったのは、劇中に流れる音楽がほぼクラシック音楽によって構成されていること。それも必ずや誰しもが聞いたことのある曲ばかり。この音楽がもたらしたのか、女の子の"イケナイ"部分を見てしまっている感覚に陥った。

そんな女の子の"イケナイ"が作品のキーポイント。女性が観れば、あぁ私も17歳くらいはこんな感じだったなぁ…なんか懐かし恥ずかしいな…って感じるはず。一方で男性は、いやまじで女子って意味分かんねえよ!!!なんなんだよ意味不明だしエロいしイラつくしエロい!!!って感じると思います。笑
そうなんです。女の子が、少女から女性へと別の生き物になる間の思春期、自己と他者の狭間でもがく姿の苛立ちとエロさを、感じ得ることができます。

本人の自覚は無くとも、異性を目の前にすると本能のさらに奥に潜む細胞レベルの"女"が、自分の体を通して外へと放出される思春期の女の子。"女は性欲の塊"といった男の子によるキーワードが劇中に登場するが、当の女の子からするとそんな甘っちょろく薄っぺらいものではない。ただ、相手を通して自己の存在を感じたい、宇宙レベルで相手を感じたい、この欲求が外に出ただけ。この、ぐちゃぐちゃとモヤモヤとした大人の手前に立つ女の子の、必死に生きる姿を、女の子の全力を映し出す専門家、山戸結希監督が世の女の子へ贈り届けてくれました。

主人公の初と同年代の女の子が観たならば、「私の脳を覆う濃くて払いきれない、湯葉のようなモヤモヤの正体」が少し見えてくる。
そんな女の子時代を経た女性が観たならば、「あの時の感覚」を肌を通して感じられる。
女の子をかき乱し、かき乱される男性が観たならば、「やっぱ女子ってわっかんねえわ。けどやっぱり可愛いしエロい」と感じられる。それでもやっぱり女の子は永遠の憧れ、エンドロールを迎える頃にはこの結論に至るはずです。笑

巨大社宅マンションや、豊洲の海岸近くが舞台なのがまたいい味出してて、とても素敵でした。狭く薄暗い雰囲気が、思春期特有の鬱々とした感情や脆く危うい感情を演出していて、冒頭から世界観に引き込まれます!あっという間に波に乗らされる作品でした。素敵。
Filmarks試写会@東映第一試写室

「早熟と遅咲き、どちらも美しい。自信を持って進め若者よ」
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