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リンドグレーンのSPNminacoのレビュー・感想・評価

リンドグレーン(2018年製作の映画)
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原題はアストリッド。「長くつ下のピッピ」などの作者がまだリンドグレーン以前の、作家になる前のお話。国民的人気作家として子供に慕われる現代をブックエンド形式に、波乱万丈で苦労した若い頃が描かれる。
保守的な田舎の大家族の中で、自由活発に振る舞う十代のアストリッド。やんちゃで溌剌としてちょっと変わった女の子が、新聞社に勤め始めたのを機にどんどんその自由と若さを失っていくのが辛い。不倫、妊娠、出産、シングルマザーの抑圧、子供との関係…「流産の痛みは女も男も同じ」と言い切ったアストリッドが、皮肉にも子供に関する全てを女だけで背負うことになる。叫びたいときに思い切り叫び、ダンスパーティで1人ムチャクチャに踊りまくるのが最高に気持ちよかったアストリッドは、もういない。色々経た後のパーティでは踊りながらよろめいて倒れてしまう。創作や文才の片鱗を見せはするものの、とてもそれどころじゃなかった。
映画はそんな苦難と同調して、スウェーデンの冬を背景に光は僅かしか差さず暗く沈んだ風景が続くのだが、ようやく暖かい光に包まれた春で終わる。女性であるために自由を押し潰されてしまった闇が、後に訪れる光とのコントラストを強調する。
アストリッド演じたアルバ・オーガストの素朴で力強い佇まいが良かったし、子役の演技と思えない演技が凄かった。けど、子供心を失った彼女が作家として子供心を取り戻せたのか、或いは次世代の子供たちに託したのか、作品との繋がりは掘り下げられずに終わってしまう。年老いたリンドグレーンの肖像をぼかしたせいで、その後の人生が彼女にとってどんなものだったのか想像できなかったのはちょっと不親切。