トレバー

プライベート・ウォーのトレバーのレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
5.0
Filmarks試写会にて。

実在する戦場ジャーナリスト、
メリー・コルヴィンの物語。

英国サンデー・ポスト紙の特派員として、
紛争地域に潜入取材する、メリー。

スリランカの、入国禁止された地区に行き
民間人や幼い子供達の、病気や飢えによる
悲惨な現状を取材する最中、銃撃戦に巻き込まれ
被弾、左目を負傷し失明してしまう。
帰国後、報道記者の賞を受ける際にメリーは
ドレスアップした装いとは似つかない、
海賊のような黒いアイパッチをつけていた。
一躍、「生きる伝説」となったメリーだったが、
上司の制止を振り払い、取り憑かれたかのように
戦地へと向かい続けた。

PTSD。
戦地での何の罪も無い人々、子供達の理不尽な死。遺体。
自らも、いつ命を落とすか分からない恐怖。
かき消すかのように、酒に溺れていく。

そこに至るまでは、女性の幸せも求めていた。
結婚して、子供を持ちたかった。 2度流産した。別れた。

戦地から戻れば、眼帯をしつつも着飾り
華やかな魅力を持つメリーはもてはやされ、
奔放な恋愛にも溺れた。でも。

戦地へ向かいたくなる気持ちは、抑えられない。
酒浸りになり被害妄想に苛まれながらも。

紛争地域の悲惨極まりない現状を知らしめたい切なる想い、
危険地域に身を晒すことを求めてしまう、まるでスリルジャンキー。
相反する感情を抱えたまま、戦場へ赴く。

メリーは身体共に限界に達しリハビリ施設に入院するが。

彼女に憧れてジャーナリストになった退役軍人ポールを連れて、
数万人の市民が苦境に追い込まれていたシリアの
現状を世界に実況すべく最前線に突入する。


主演のロザムンド・パイクが破格です。
撮影当時40歳に満たなかったはずなのに、
まるで50代の女性に見える裸体を晒します。
おそらく、急激に痩せるという方法を取ったのでしょう。
そういった、まるでデニーロアプローチに留まらず
演技のアプローチが、そこまでするか、と思わせる
鬼気迫るものがありました。

プロデューサーにシャーリーズ・セロンが名を連ねているのですが
きっと彼女こそ、この役をやりたかったに違いありません。

監督はドキュメントを撮り続けていた方で、
メキシコの麻薬カルテルやシリアの紛争地帯といった
危険な地帯を撮影してきた経験からか戦場の演出は
非常に生々しく恐怖すら覚えるほど。

そんな地獄に、まるで自殺行為のように向かっていくメリー。
PTSDを、更に上回る恐怖で覆い隠すかのように。
自らを使命感で奮い立たせながら。


凄まじい作品でした。



上映後、放送作家の町山広美さんと映画評論家の村山章さんが登壇されました。
その際、町山さんが印象的な事を仰っていて。

メリーが、着替えている時に仲間のポールに
派手なブラを指摘するのですが、
有名なブランドで数万円するもの。
元からメリーはとてもお洒落な人だったようなのですが、
やはり戦場でいつ命を落とすか分からないから、
綺麗なものを着用していたかったんじゃないかと。

あと、メリーは劇中で描かれる以上に奔放な恋愛を楽しんでいたようなのですが、
それは身近で失われていく命を目の当たりにすると
どうしても人を求めたくなるのではないか、と
ご自身がお母さんの介護と看取りを経験した際に
実感された事も仰られていて。

確かに、ボクも十数年前になりますが、
母親を介護、看取った際に無性に人恋しくなりました。
当時パートナーもいませんでしたので、
行き所の無い感情と母親を失った悲しみで
どうしたらいいか分からなかったのを思い出しましたね。