蛇らい

プライベート・ウォーの蛇らいのレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
2.9
『バハールの涙』という映画にもメリー・コルヴィンをモデルにした登場人物が出てくるが、人柄やビジュアル的に非常に画になる人物と言っていい。

物語は彼女の人生を通して見る世界情勢という形式で語られる。ひとつの物事に異常な執着を見せ、死ぬ瞬間まで囚われている様子は『さらば愛しきアウトロー』で銀行強盗と脱獄を生涯のライフワークにした、フォレスト・タッカーにも共通するマインドを感じた。

何かの研究や趣味、表現など人は様々なものに情熱を注ぐものだが、彼にとっては銀行強盗と脱獄、彼女にとっては、戦場に行くことがそれに当てはまるというだけで、おかしなことではなないのかもしれない。

監督は、世界情勢をドキュメンタリー作品で生々しい映像表現で発信してきた監督である。そうした意味では、監督とメリー・コルヴィンはジャーナリズムと芸術作品という違いはあるが、とても近い場所で共鳴し合っているのではないかと思う。

現場でも実際の難民をキャスティングし、暴力的なシーンでは、過去の出来事を思い出し、泣き崩れる人もいたという。逃れられないリアリティのある現場で演じた役者たちが受けた影響が映像にも乗っかっていたのではないかと思う。

ただ、率直に言うと彼女のプライベートな面に関しては、まったくもって興味がない。この作品では、戦場の現実と彼女のプライベートで半々くらいのバランスで成り立っている。彼女の目を通して見えた、彼女しか感じることのできない感覚をもって戦場や人々の暮らしを描き、暴いてほしかった。彼女に興味を持てるか、そこがこの映画を評価する第一関門になると思う。

戦争に対して批評性を持って挑んでいる作品というより、戦争への向き合い方、向き合う人の映画なので、考え方にシンパシーを感じて彼女をヒーローだと感じることができなければ難しいなと思った。
蛇らい

蛇らい