shiho

ティム・バートンのコープスブライドのshihoのレビュー・感想・評価

4.2
※ストーリーはラストまで語っちゃってるので、知りたくない人は注意!

ロシアの民話を元にした、ティムバートン監督のストップモーション映画。
19世紀のヨーロッパが舞台。
成金魚屋の息子ビクターと、没落貴族の娘ヴィクトリアは、親の都合で結婚させられることに。
結婚式前日に初めて顔を合わせたが、二人ともかなり好印象だった。しかしリハーサルで緊張しすぎたビクターは作法をこなせず、結婚式は延期となる。
1人暗い森の中で木の枝を花嫁の手に見立てて練習していたら、なんとそれは本物の死体の手だった!死体と婚約の儀を交わしてしまったビクターは、コープス・ブライド(死体の花嫁)のエミリーに死者の世界へ連れ去られてしまうのでした☆
というのが話の冒頭です。

これすごかったです笑
「ストップモーションだっけ?」ってくらいの認識で観てたけど、普通に出来のいいCGに見えちゃうくらいのクオリティ笑
逆にもう少し動きを拙くした方が趣きが伝わったのでは…?と思っちゃうレベル笑
でも特典映像の作業工程やスタッフ達を見ていると、ものっすごい技術と手間と愛情と情熱をかけてやっているのがわかります。正直その手間と時間とコスパ的に合うか?って言ったらわからんけど、それでもこれはすごい。
実際に一体30㎝くらいの表情めっちゃ動かせるパペット(お人形)たちの精巧さ!
なんか造形がイラストみたいでキモい?って最初思ったけど、ある意味特徴を大げさにしているというか、生身の人間にもディズニーの3Dアニメにも出せない良さがあり、クセになりました。
エミリー(コープスブライド)のベールが風になびくところとか、綺麗。

男女が二人っきりになるだけで「汚らわしい!」とか言うヴィクトリアのママン。音楽もだめ。現世は窮屈でつまらなく、いつも暗く描かれている。
それと比較して死者の世界は皆がバーで歌い踊り、お気楽でカラフル。死者たちは「死ぬのもそう悪くない」と歌う。
まぁ歌のシーンは長かったしガイコツはどうも苦手なのでダルかったが笑

話の展開的にはわりと王道を行くんだけど、「結婚」というものを考えさせられる。やはり花嫁というのは特別だ。友達の結婚式に出た時は、あのベールがとても神聖なものに見えた。
ヴィクトリアは、最初なんの希望も持っていなかった結婚だったが、ビクターを好きになってから表情が豊かになる。もう私はヴィクトリアがかわいくて(容姿は地味目の設定)、健気でかわいくてたまらなかったですね。

駆け落ちしようとしていた相手に騙されて殺されたエミリーは、半自暴自棄になったビクターが死んで自分と一緒になろうとしたのに、本物の花嫁ヴィクトリアを見つけ、涙をポロポロと流しながらそれを止める。
そして(形状)結婚してもらったおかげで成仏出来たのか、たくさんの蝶に変わって消えていく。
そのシーンはとても美しく、そして悲しく涙が出た。
エミリーは最初ちょっと不気味だったんだけど、おどけている裏側に憂いがあってとても愛おしかった。来世で幸せになれ。

ところでこれ、主人公のビクターはお馴染みのジョニー・デップが、死体の花嫁エミリーは監督の奥さん、ヘレナ・ボトム=カーターが声あててる。
またかよ!と突っ込みはもう入れるまい。
ジョニデが、インタビューで監督のことを
「彼は芸術家だ。白いキャンバスを見つめる芸術家の目をしている」って言ってて、納得しちゃいました。
あ〜そうか、芸術とは愛でるものだと笑
いつもティムバートンは表現はすごいがストーリーが薄っぺらいと文句を言ってきました笑
これからも言うと思いますが、彼の描きたい世界を見るのはやっぱり楽しいですね。そういう心構えで観ることにします♩

ティムバートンとスタッフ達の芸術と愛情の結晶!
shiho

shiho