SHIDOU

カイジ 動物世界/動物世界のSHIDOUのレビュー・感想・評価

3.5
人生を逆転するために危険なギャンブルに身を投じることとなった青年、カイジの物語が中国映画化。

日本でもすでに藤原竜也主演で映画になっている、おなじみの作品だ。

日本版は、藤原竜也他、香川照之や伊勢谷友介ら出演陣の過剰な演技が全て、と言っていいくらいの怪作であった。
特に原作のカイジのクズっぷりを余すところなく再現してみせた藤原竜也は、あれだけのイケメンなのにちゃんと原作のイメージを損なわない。まさに圧巻の一言。

一方今作のカイジは、感情が高ぶるとピエロになるという謎の妄想癖があるが、人間としては割とマトモな部類で、不幸な生い立ちを抱えながらちゃんと(?)仕事もしており、しかも可愛らしい彼女もいる(!)という、原作からはかけ離れた設定。そしてどん底にいる割には妙なほどクール。

これのどこがカイジ?と思う人もいるだろうがちょっと待ってほしい。今作は日本版とは異なる要素が、メチャメチャ原作を再現している。

ギャンブルの最中、揺れ動く心情を豊かなイメージで表現する、というシーンが原作ではよく見られる。そのイメージシーンが、しっかりお金をかけてクオリティ高く作り込まれているのだ。

また、「カイジは妄想癖」と書いたが、イメージと同様に妄想においても様々な局面で、ハリウッドさながらのカーチェイスが繰り広げられたり、大勢のクリーチャーを斬って倒す大立ち回りなど、迫力満点の映像が展開される。本編の流れから必然かどうかと言われると微妙だが、それがないとギャンブルシーンは絵面的に地味なこともあるし、映像として楽しいので良い。

そしてギャンブルのシーンについては概ね原作に忠実。シリーズ最初の「限定ジャンケン」を、たっぷり時間をかけて描く。忠実すぎて、原作や日本版をみていると展開がほぼ丸わかりで、ある種の確認作業となるが、それもまた楽しい。

ギャンブルを取り仕切る男(原作での利根川幸雄にあたる)をマイケル・ダグラスが演じているが、正直顔見せ程度であり、今後続く(かもしれない)続編での活躍に期待がかかる。

原作珠玉のエピソード、鉄骨渡り編やEカード編をどのように表現するのか…楽しみである。
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