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アド・アストラのneroのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.0
地球外知性体の探査を目的とするリマ計画から28年後、かつて海王星軌道で消息を絶った父の仕業と思われる謎のサージが地球を襲う。息子ロイ(ブラッド・ピット)は真実を求めて、地球から月へ、火星へ、そして父の探査船へとたどり着く・・・
とにかく孤独と静寂が124分を支配する。外宇宙への示唆を背景に、対照的にロイの内面への深堀りが延々と続くので正直かなり鬱な映画でもある。ほとんどロイのモノローグのみで進むので余計にそう感じる。ただ、その宇宙観は紛れもなく2001に対するオマージュと言えるだろう。

軌道エレベータ級の国際アンテナといい、月と火星の地下基地といい、環境全てに生活圏としての考証がきっちりとなされていることが窺える。特に火星基地の通路は心理表現と構造体であることを同時に匂わせていて良い。
その一方で月面でのバギーチェイスはいい加減だし、宇宙船周りの考証は結構雑。火星出発時に一人になってしまうためもあり、余計な説明や会話が一切ないのは小気味良い。でも、わずか79日で海王星軌道まで達するって無茶苦茶早くない? 30年かそこらでスッゴイ進歩ですコト。まぁ特に後半はあちこち突っ込みたくなるのは事実だが、ケフェウスの航路も、ヴォイジャー2のグランドツアーを追体験するような実に気持ちいい映像の連続で宇宙感を満喫できる。工事中のため叶わなかったが、これはIMAXで観たかったなあ。

Per aspera ad astra. ラテン語で「困難を通じて天へ」某アニメでもネタにされている成句だ。adはほぼtowardらしいので、ここは「星々の彼方へ」と訳したい。終局、当然父の意志を継いで(あるいは共に)外宇宙へという流れかと思ったんだが、あっさり地球に帰還してしまうのは自分的には『?』(それも特大の) どうみてもロイには戻るべき理由も縁も感じられなかったんだが・・・ (戻ったら犯罪者だと思うしね)
ロイという人間の内面を描いた父子ドラマとすれば納得なのかもしれないが、宇宙映画としては、地上の諸々の軛を捨て、カイパーベルトを越えていく人類の姿を見たかった。
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