偽名祐司

アド・アストラの偽名祐司のレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
1.4
43億光年離れた海王星まで旅をして自分を見つめなおし離婚した奥さんとやり直す映画。
そんな馬鹿なと思うなら観ないほうが良い。
はるか彼方の宇宙まで行ってやる事が週末カウンセラーで数回話せば済む事で終わるというね。
こんな雑な脚本というか設定というか、とにかくSF舐めた世界観がハリウッドの作品で見れるとは。ある意味貴重です。

話はアプリ参照で。
主人公は常に精神的に安定している宇宙飛行士ロイ。サージ電流を引き起こす放射パルスの影響で起きた事故から生き延びた後。その放射パルスが遠く離れた海王星が発生源である可能性を聞かされる。しかもそこには16年前に海王星に未知の生命体の探査目的で旅立った父クリフォードが居るかもしれないと。消息不明であった父と地球の危機である放射パルス。二つの要素が組み合わさり、ロイはその危機を解決するべく遠く離れた宇宙の旅に出る。

OPで語られる自己心理テストモノローグがポイント。
だろうなとは思いましたがまさかそれで話が終わるとは思いませんでした。ただの心理描写を台詞で延々と聞かせられてもねえ。と思うか、解りやすい表現と思うかは人次第でしょうか。それはさておき。

物語にはリアリティ(どれだけ現実に近いか)という要素が存在し、観客が物語に対して無意識に要求するリアリティの段階が存在します。

簡単な例を挙げますが。
アンパンマンの世界に物理法則だったり、なぜ顔を交換すれば回復するのか?等の理由を求める人はいません。
どらえもんの秘密道具に詳しい理論が無いからという理由で否定する人もいません。
逆に現代を舞台にした話に魔法やスーパーパワーが出てくる事はありません。物語にどれだけリアリティを求めるかによって話のジャンルは固まってくるのです。
ディズニーの世界には魔法や喋る動物は何の理由もなくいても構いませんが、ハリーポッターや指輪物語には細かい設定や理由が存在します。

これらは話のジャンルによっても存在します。解りやすいのが主人公補正。アクション映画において主人公にだけは銃弾が当たらない系のやつです。サスペンス映画で主人公は危機に陥ってもなんとか助かる系とも言えます。
この辺はその映画に対し観客が何を求めているか、を製作者が把握し、ある程度バランスを持ってリアリティとファンタジーを混ぜ込む必要があります。有名俳優が活躍する映画を作るならある程度ご都合主義で話を作っても構いませんが、そうでないのならご都合主義は程ほどにしておかないと批判を受けてしまいます。その辺はまさに監督や脚本家のさじ加減という事になります。

で、SFの場合。
サイエンスフィクションとの言葉通りそりゃまあフィクションではあるのですが、ある程度科学的な検証がされた空間が要求されます。もちろん作品にもよりますが。
スターウォーズにそこまで真面目なリアリティを求めてる人は少ないでしょうし。アルマゲドンも同様です。
ですが基本的に宇宙を舞台にしたしかも近未来の作品であるのならある程度の科学的検証のなされた、現実的な物理法則が存在する宇宙空間での出来事を要求されるはずです。例えば生身で宇宙には出られないのは当然ですし。無重力故の物理法則は厳然として存在するはずです。そこを破ってしまってはもはや一気にコミックの世界やファンタジーの世界になります。簡潔に言えば世界観が崩壊するのです。

という個人的な見解を唐突に書き連ねた訳ですが。多分映画を観た人には理由がわかると思います。

ともあれブラッドピット宇宙無双と思えば割と見てられるような気がしないでもない?かもしれませんが
とにかく万事に対し冷静に対処するブラッドピットが格好良いのかその他の人々がポンコツすぎるだけなのか。
宇宙の旅路をモチーフとして孤独と心の変化を描く、と観れば多分面白いかもしれません。っていう事にしておいて下さい。
月面カーチェイスやサスペンス要素も入り混じりごった煮のような面白さもあると思います。
特にお勧めする気はありませんが、気になる人はどうぞ。
ネタバレ突っ込み大会はコメントで。
偽名祐司

偽名祐司