エイデン

アド・アストラのエイデンのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
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人類の宇宙進出が盛んになった近未来
人類は火星に基地を建造し、地球外生命体の探索に乗り出していた
そんな地球外生命体の探索に人生を賭けた伝説の宇宙飛行士クリフォードを父に持つ宇宙軍少佐のロイは、衛星軌道上の施設での任務中 爆発事故に巻き込まれてしまう
無事に地球へ帰還したロイは、心拍数すら乱れない揺るぎない精神力でメンタルチェックもパスし、その優秀さを評価される
ロイは16年前に父を失ってから他人を遠ざけるようになり妻イヴとも離婚、以来 度が過ぎるほどの冷静さを保っていた
その後ロイは宇宙軍によって呼び出され、ある極秘任務の遂行を命じられる
それは、先の爆発事故をはじめ、多くの被害を出してる“サージ電流”を止めるというものだった
その原因と考えられるのは、16年前 地球から43億キロ離れた海王星で消息を絶った父クリフォードだという
死んだと考えられていたクリフォードは、海王星での地球外生命体探索任務“リマ計画”にリーダーとして参加していた
リマ計画では反物質装置が用いられており、それが起動していることがサージ電流の原因ではないかというのだ
つまりクリフォードは未だ宇宙の果てで生存している可能性があると知り、ロイは愕然とする
今回の計画では、火星の地下基地からレーザー通信を用いて海王星へとロイのメッセージを送り、装置を止めてもらうよう説得するというものだった
ロイは困惑しながらも任務を承諾し、クリフォードの旧友だったプルーイット大佐が同行し、火星への経由地である月へと向かう
プルーイットはクリフォードの仕事仲間だったが、頑なに地球外生命体の探索に固執する彼とは意見が分かれてしまい、喧嘩別れしていた
月に到着した2人は、宇宙軍の護衛を引き連れながら火星へ向かうロケット“ケフェウス号”が待機する発着場に向けて陸路を車で向かう
しかしその途中 月にはびこる略奪者のグループに襲われてしまい護衛は全滅し、プルーイットも傷を負ってしまう
辛くも何を逃れたロイだったが、プルーイットは酷い不整脈を起こしてしまい、手術のため同行を断念することに
1人ケフェウス号に向かうロイにプルーイットは、軍はロイが任務を遂行できると信じていないと言い、任務の全貌を明かす
それはロイの説得にクリフォードが応じない場合、彼らの乗る“リマ号”を破壊するという強行的な二次計画だった
ロイはそれを聞き、複雑な思いを抱えながら火星へと旅立つ



ブラッド・ピット主演のSFドラマ
ジャンル分けとして何が適切かと考えてたけど、ネットで見かけたエピックものというのがしっくり来るかも

一言で表現するなら、宇宙を舞台にした壮大すぎる親離れ なのかな
父クリフォードの行方不明という中途半端な別れをしてしまったロイが、その関係を精算する旅に出る
また同時に、孤独に生きるロイの心情の変化を細やかなブラッド・ピットの演技で魅せる

叙述的な構成から難解ではあるけど、単純に捉えてしまっていいと思ってる
行く先々でトラブルにも見舞われながら、なおも父との再会のため宇宙を行くロイのロードムービー的な
決してエンタメではないものの、その旅はスリリングで、ロイにとって大きな意味を持っていく

ストーリーはジョセフ・コンラッドの小説『闇の奥』がベースになってるそうだけど、この小説はフランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』にインスピレーションを与えたらしく、随所にそれっぽいところも登場する
ただより哲学的なテーマを孕ませたのが本作の特徴的な部分でもある

単純に捉えてという話をしたけど、どこまでも哲学的に深掘りできるのが本作
タイトルにあるアド・アストラはラテン語で「星々へ」という意味で、古くは古代ローマの詩人ウェルギリウスの『アエネーイス』にも登場する
それが「macte virtute sic itur ad astra(優れた者はかくして星々へ至る)」
星々に待ち受けるものは
英雄である父を失った喪失感は、何を持って埋めることができるのか
言葉にはしづらいけど、ロイの孤独な旅に寄り添ううち、自分の孤独にも手を差し伸べられるような温かなものがあるのは確かなので、時には宇宙に身を委ねて愉しみましょう
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