ケイスケ

アド・アストラのケイスケのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.0
なるほど、『地獄の黙示録』との類似点があると言われてるのも納得。ブラッド・ピット×SFという組み合わせからアクション映画を連想させるが、ハッキリと娯楽作という内容からは背を向けた異色作。

地球外生命体の探求に人生をささげ、宇宙で活躍する父の姿を見て育ったロイは自身も宇宙で働く仕事を選ぶ。しかしその父は地球外生命体の探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた海王星付近で消息を絶ってしまう。時が流れエリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。

まず本作のブラッド・ピット演じるロイ・マクブライドというキャラが、彼が今まで演じたキャラクターでは珍しいタイプ。『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンや『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクリフ・ブースなどとは違い、他人と関わることをせず内に篭りずっと賢者タイムみたいな人。

ジャンルとしてはSFなんでしょうけど、話は父子の確執や葛藤をメインに描いており、重いドラマ仕立てとなっています。また映像が非常に美しく月面や火星の基地のセットが素晴らしい。特に火星基地の赤い異様さは鳥肌ものですね。音による緩急の付け方も見事で宇宙描写は面白かったです。

…ただ、映画としての面白さがあるかと言われると微妙。バカみたいなことを言ってしまいますが、父と子の確執の話をなんでわざわざ海王星で見なきゃいけないんだ。監視役のプルーイット大佐は具合悪くなって早々に居なくなるし、新キャラが次々に出てきては5分くらいで死ぬしなんだこれ。火星に行ってから退場するキャラは話に必然性があるから良いんですが。

演出で何となく高尚風にしてますが、ハッキリ言ってこの重苦しい雰囲気に舞台設定が追いついていない。月に現れる盗賊集団や暴れる実験動物は、監督がプロデューサーから「グレイちゃ〜ん?コレちょっと地味じゃない?1、2箇所くらいさ、宣伝用に派手なアクション入れちゃってよ〜」とか言われて入れたのか?サージの原因も正直「なにそれ…」ってなった。

あとこの映画って異常に眠くなるんですよね。これはつまらないとかじゃなく、劇伴や演出が心地良くてウトウトしてしまう。それほど音楽は良いと思いました。この作品は本当に評価が難しく、好きな人には至極の一本になると思います。でも自分にはいまいちピンと来ず…。あ、ラストの締めかたは結構好きでした。