Adachi

アナベル 死霊博物館のAdachiのレビュー・感想・評価

アナベル 死霊博物館(2019年製作の映画)
4.1
死霊館シリーズ史上最高に楽しかった。
ちゃんとホラーでありながら、鑑賞後はとても優しい心地よさが残る。然るべき解説者が居れば、子どもへの教育的にも良いんじゃないかなと思うほどの心配りの丁寧さと、物語の計算高さに感動してしまいました。

本来主役であるウォーレン夫妻は、序盤アナベルを連れ帰り(なぜかいつもキィキィ揺れる椅子に座らせる)、神父と一緒に除霊的祈祷(全く効果なし)を行った段階でお仕事で家を空けてしまい、夫妻の娘であり、夫妻から除霊能力を受け継いだ天才少女ジュディ(彼女はいつも変なものを持ち帰ってくる両親をどう思っているのか)、本映画の絶叫と優しいお姉さん担当メアリー、そしてなぜかオカルトに興味津々、余計なことする奴担当ダニエラという、主人公が女の子三人というのも、誰もが共感しやすい部分なのかなと思う。

この女子3人(ところによりボブ)による、ドキドキ・ワクワク・ハラハラ、人形界の女帝・アナベル人形との楽しい一夜の逆ホーム・アローン型サバイバル劇の開演である。

お馴染みの死霊館アベンジャーズの集結やら、実物アナベル友情出演など、シリーズファンも納得で嬉しいポイントなわけですが、同時に本作から初めて観る人にも全く問題なく物語に入り込めるような、お化け屋敷的作りになっており、ショックシーン、惨殺シーンは最小限に抑えながらも、毎作ながら空間と暗闇の使い方、心霊の見せ方、見せると思わせて見せない演出等など、いくつもの映画的アイデアを駆使させており、ホラー映画としての興味の持続がしっかりと保たれ続けるので、終始ドキドキしながら鑑賞できました。


そして本作の重要な部分として、主題が「赦し」であること。
特に、余計なことをして原因を作ってしまうダニエラに対して、ちゃんと観客として許せる演出になっていることが非常に重要なのだと思う。

特に注目すべきポイントは、メインの物語と関係なさそうな序盤の不穏さたっぷり過去シークエンスにおいて、ある事故車のそばに佇んでいるのは「誰か」。その後の展開の中で特にこのシーンを説明されることはないのですが、ここが非常に重要な箇所であり、その後トラックがウォ―レン夫妻に突進する場面で、ここで運転手が語る「何のためにあるのか分からないセリフ」が実はとても重要であり、執拗に十字架を最強武器として配置する点や、ジュディとダニエラの弟(いじめっ子)との関係、それらを主題である「赦し」と組み合わせ、ラストのロレインとダニエラの会話シーンに至るまでの全てが、キリスト教に置ける最重要の道徳的テーゼを物語的目的に落とし込む、綿密に計算された脚本と心配りが本当に凄かったです。

余談
鑑賞時、平日ということもありながら、久々に劇場一人という貴重な体験しました。
この体験もまた、アナベルの呪い、、、とでも言うのだろうか。(ほん呪風)
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