キナ

麻雀放浪記2020のキナのレビュー・感想・評価

麻雀放浪記2020(2019年製作の映画)
3.5
実力ある監督が大真面目に遊び、全力でふざけた映画。
「サニー/32」以来のこの系統。
正直全く期待していなかったしむしろ駄作を期待していたのに、意外や意外に結構楽しめた。
原作未読。大穴の作品。

単純明快かつ荒唐無稽かつ渾渾沌沌なストーリは案外分かりやすくわりと面白い。
ギャンブルバトル、タイムスリップの先の帰還、ラブストーリー、下衆ショー、色々な要素が詰まってごちゃついている。
しかしキャラクターや演出の魅力が大きく、その押しの強さにテンションが上がってたまらなかった。
頻繁に挟まれるギャグがハマれば頭ゆるゆるにして楽しめる。それが駄目なら諦め必須。

麻雀のルールに明るくないので駆け引きの詳細はスルーしてしまったが、それでも登場人物の味わうハラハラは味わえた。
もちろん麻雀をやる人が観たらより楽しいんだろうけど。
金がなくなれば身体はおろか命すら賭ける。ヒリヒリした勝負に滾る。ほぼ依存症の域にも思えるが、いやはや痺れる。
チンチロリンなんて小さなゲームにすら鬼気迫る展開に。なぜなんだ…博打打ちってなんなんだ…!

舞台となった2020年は現代というより近未来で、技術は進歩していても活気があまり見られない世界。
東京ゴリンピックという名称も重ならない五輪マークもギリギリで好き。
まさかの戦後設定に驚いた。
だからまた麻雀が流行っているのか。
現実味のあるような無いような、もしかしたら今の日本がそうなっていたかもしれないパラレルワールド的な世界観が魅力的。
もっと風刺が効いていればなとは思いつつ。

昭和の戦後からタイムスリップしてきた哲と周りののギャップ、言動の差が一々笑えた。
VRは相当怖いよねそりゃあ。
金の亡者的で欲望に忠実なクソ丸のお調子者感は見事。
排泄しながら摂取するとは何事か。
プロデュース能力もまずまず。ふんどしシャブシャブねえ、まあ行きたいね。斎藤工の桃尻も良し。

獣交趣味の麻雀アイドルドテ子の哀しきサガ。
惚れた男が帰ろうとするのを助けるのかどうなのか、シマウマ相手に身体を許し続けるのかどうなのか。
最後普通にキュンときて切なく感じてしまうの愛しいじゃない。
ミスマッチな三人の組み合わせとその掛け合いが好き。ずっと見ていたい。
麻雀アプリに没頭する哲とドテ子のやり取りが特にお気に入り。

全編iPhone撮影、独特の映像が面白い。
小型ならではの画期的なアングルに興奮するし、少し粗めで作品のチープさが増しているのも良い。
こんなの綺麗なカメラで撮っても雰囲気出ないでしょう。

徹底してチープな作風のわりにしっかりした役者揃いでバランスが良く、中でもベッキーが際立って良かった。
完璧レディなママも完璧プレイヤーなAIも見事にハマっていた。
大きい目と極端に綺麗な顔面の現実味の無さがよく合っているし、棒読み演技も大当たり。
あと突然の舛添要一で相当笑えた。都知事役ってそれ大丈夫?
みんながみんな素晴らしい俳優にしてもそれはまた違和感があるし、外しの配分が上手いと思う。岡崎体育も至高。

この調子だとループになる気もするが、綺麗に放り投げたラストにニンマリした。
決して「すごく面白い!」とか「先が気になってドキドキする」ようなものではなかったがそれなりに楽しい、贅沢なB級映画。
キナ

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