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コンフィデンスマンJP ロマンス編のsanbonのレビュー・感想・評価

3.8
古沢良太は作品によって天才的な脚本力を発揮する、数いる脚本家の中でも頭一つ抜け出た逸材だ。

とりわけこのコンフィデンスマンJPはドラマ版スペシャル版も含め、全てがハイクオリティで制作されており、リーガルハイに並ぶ彼の新たな代表作になったに違いない。

この度、その完成度の高さを受け韓国と中国での製作も決定し、それぞれコンフィデンスマンKRとコンフィデンスマンCNとしてインターナショナル化もするらしい。

そんな人気作の劇場版「ロマンス編」、舞台も日本を飛び出しまさに豪華版の様相だ。

この作品は、裏で悪名を轟かせる金持ちのみをターゲットに詐欺を働く信用詐欺師三人組の物語であり、様々な手でお魚と呼称するターゲットを欺き、大金を騙し取る顛末を一話完結形式で描いていくのだが、そのトリックのネタばらしをラストに集約する事で視聴者ともども欺く作りが面白く、視聴者は物語の9割をミスリードしたまま鑑賞する事になり、最後の最後に全てをひっくり返される快感がたまらない。

今作もそんな作りは健在で、本当にラスト十数分を迎えるまで、何が真実で何が偽りだったのか一つたりとも分からないので最後まで目が離せない。

また、今回サブテーマがロマンスという事もあり、「ダー子」と「ボクちゃん」互いの想いがどこまで本心なのかという部分にも非常にヤキモキさせられて、劇場版という特別感を引き立てるいいアクセントにもなっている。

あと、今作のもう一つの特徴としては、決して推理して楽しむものではないという事。

楽しみ方は人それぞれだし、人によってはアンテナをビンビンにおっ立てて臨戦態勢で臨む方もいるかと思うが、僕個人としてはその見方はやめた方がいいと思う。

何故ならトリック自体が一話の中に何重と張り巡らせてある為、一つ二つ予測したところでまるで意味が無いし、中途半端に予想した方が出し抜かれた感が強まる為、逆に消化不良になってしまう可能性が高いからだ。

また、トリックによっては脚本家の裁量でどうとでもなってしまったりする事も度々あるので、そもそも見破る事自体不可能な場合も少なくない。

そもそも、構成上推理のヒントになるものが事前に提示される訳でもないし。

なのでこの作品は、種明かしが始まるまでスクリーンで起きている事をただ純粋に楽しむだけでいい。

ちゃんとそれに耐えられるよう、登場するキャラクターは全員アクが強く非現実的なほど個性的に味付けがされているので、推理などせずともやりとりをただ眺めているだけでも楽しく、しかも楽しんだ後にはもっと楽しい答え合わせの時間も待っており、楽しさの二重構造という実においしい作りになっているからだ。

ただ、敢えて言わせてもらうと、スッキリするまでの助走が本作のように二時間以上にもなると、真実を隠された状態と知っている分、辛抱たまらず途中で飢餓感に襲われ、もうそろそろ種明かししてよ!となる為、やや時間的な長さを感じてしまうのは否めず、この手の作品に関して言えば、やはり一話完結の一時間ドラマが尺としては一番合っているのかもしれない。

そして、今作でターゲットとなるのは香港で氷姫と称される女帝「ラン・リウ」。

この作品は回を重ねる毎に、ミスリードをさせる為のタネが、どんどんと根本的な部分に仕掛けられてる事が多くなっている。

今回はどこからが偽りの設定なのか、是非とも頭を空っぽにした状態で罠にハマる事をオススメしたい。

また、今作は集大成という側面もあるため、出演している役者が本当に"無駄"に豪華となっているので、その点も合わせて楽しんで欲しいと思う。

ストーリーとしては公開翌日に放送されたスペシャル版の「運勢編」の方が好みだったが、いずれにしてもどちらも高水準な完成度である事に変わりはない為全く問題ではない。

が、こちらもやはり二時間は長いなと思ってしまった。

あと、今作とスペシャル版のエンドロール後にちょびっと登場した生瀬勝久の物語にはいつでもいいので、しっかりと決着はつけてほしい。
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