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アマンダと僕のchiakihayashiのレビュー・感想・評価

アマンダと僕(2018年製作の映画)
4.2
 僕はダヴィッド、24歳、パリでアパートの管理人兼便利屋のようなことをしている。シングル・マザーの姉は7歳になる娘のアマンダとふたり暮らし。20年前に母と離婚して、僕たち姉弟を育ててくれた父は3年前に他界した。僕には地方から出て来てピアノ教師をしているレナというガールフレンドができた。姉も誰かとつきあい始めているらしい−−−−。

 そんなささやかな日常は突然に破られる。姉が無差別テロの犠牲となって亡くなり、レナも腕を負傷したのだ。
 遺されたアマンダをどうするか? 父親代わりになる準備なんてできていない、僕は未だ若すぎる・・・・・・。

 第31回東京国際映画祭でグランプリと最優秀脚本賞を受賞したこの爽やかな佳作が素敵なのは、ダヴィッドがちゃんと泣く青年であること。もちろん、母親を失ったアマンダは何度も泣きじゃくるのだけれど−−−−ラストシーンの彼女の涙の貴くも愛おしいこと!−−−−ダヴィッドも一度ならず、友人の肩を借りて、あるいは駅の群衆のなかで突然に、泣き崩れる。
 涙を流す度に、ほんの少し、数字にすれば1グラム、1ミリにすぎなくても、胸のつかえは軽くなり、未来に向けて歩みを進めている。そんな機微が優しい繊細さと強靱な節度でもって描かれる。

 主演のヴァンサン・ラコストは、線は細いけれど軽やかな自然体で、いかにも非マッチョな現代青年。コメディ『VICTORIA』(ジュスティーヌ・トリエ監督、16年)でのバリキャリ女性弁護士のベビーシッター兼アシスタント兼うんと年下の恋人役だったときも、実に肩の力が抜けていてオッ!と思ったものだった。

 やはり喪失の傷が静かに癒えていくプロセスを描いた監督の前作『サマーフィーリング』(15年)も併せて公開される。
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