エソラゴト

アマンダと僕のエソラゴトのレビュー・感想・評価

アマンダと僕(2018年製作の映画)
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ある出来事がきっかけで物語の前半と後半でこの青年と少女の2人が送っていた日々の暮らしは全く別のものに変容してしまいます。複雑な心情と先行きの不安を抱えながらも、それでも青年は仕事に少女は学校に通うという今迄と変わらない日常を送らなければなりません。

その悲しみや喪失感はその直後ではなく時間が経ち普段の何気ない日常に戻ったふとした瞬間、突然襲ってくるもの…泣き叫ぶ訳でも喚き散らす訳でもなく人知れずごくごく自然に嗚咽を漏らすこの2人の姿は自分も同じ経験があるせいか、自然に目が潤んでしまいました。

偶然にも同じ日に鑑賞した音楽映画『ハーツ・ビート・ラウド』では、主人公の女の子が乗れなかった自転車を乗りこなす事で過去の辛い記憶を克服しようとするエピソードが挿し込まれています。恋人の協力もありその努力が身を結び、街中を笑顔で駆け抜ける様はとても爽快に見えました。

奇しくも今作でも自転車が一つのキーアイテムとなっており、パリやロンドンの都会の街並みを颯爽と走る場面が印象的に映し出されます。確かに自転車は自分の脚で漕ぐ事で前にしか進むことしか出来ないものだし、スピードを上げるのも緩めるのもそして行く先を決めるのも自分次第ー。

前途多難は承知の上、それでも笑顔を交わしながら穏やかな街並みをゆっくりと自転車を走らせる2人の姿には「幸あれ!」と目一杯のエールを送らずにはおれませんでした。



追記:音楽も場面に合った選曲がなされており聴き心地も良かったです。中でも日本のインストバンドMONOの「Moonlight」が効果的に使われていて印象に残りました。