KnightsofOdessa

ヒズ・マスターズ・ヴォイスのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
["ハロウィンナイトに変な映画だったわよね"byルットカイ・ジョーフィア(脚本)] 70点

監督が"大好きなのレムの中で一番安く作れそうだったから"と言って笑いを誘っていたパールフィ・ジョルジの新作(ほぼ着想だけだろ)。ほとんど期待してなかっただけあったのか存外に面白かった。SFに区分すると"少し不思議"となるけど、本作品は"だいぶ不思議"な映画だった。

内容的にはソ連崩壊時に学生だった監督くらいの世代の資本主義の受容、家族愛、アメリカの都市伝説、宇宙ものから人間の起源と行く末まで多数の議題を扱っており、しかも関係ない挿話(廃墟に暮らす人々、恋人の元カレたち、巨人に食い殺される幻想など)まで混ぜ混むことで議論は基本的に発散している。家族愛と不思議な哲学によって取り敢えずまとまっているという印象。要は監督がやりたいことをやっただけなのだが、これほどまでに自由であるが故に次にどう転ぶか分からない危うさがあって気が付いたら引き込まれていた。斯く言う私も途中までつまらなさに絶望していたが、ラストの家系図で完全に持っていかれた。華麗なる一本締め、あっぱれ!

でもやっぱり"ヒズ・マスター"が全然出てこないのはいただけないし、脚本は爆発四散してるから一本締めがなかったら終わってたと思うわ。

次回作もレム原作を企画しているらしい。こういうQ&Aも楽しいけど、私がいた時間は監督しか答えてなかったから矢田部さん残りの二人にも回してあげて。
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