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ザ・リバーのlpのレビュー・感想・評価

ザ・リバー(2018年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

コンペティション2本目は、カザフスタン映画の『ザ・リバー』。コンペティションのラインナップが発表された当初は、アート色が強そうなイメージがあり、実はあまり興味が湧かなかった今作。プログラミングディレクターの矢田部さんの話を聞いたりしている内に、次第に興味が湧いてきたので鑑賞することに。先日の『世界の優しき無関心』に続いて、カザフスタン映画を立て続けに観られる(日本での劇場公開作が滅多に無いので、普通はまず無理)という、これもまた映画祭の醍醐味の1つだなぁと思いつつ鑑賞。

そして今作は、期待を大きく上回る傑作だった!
厳しい父親の管理下で、外界から隔離された暮らしをする5人兄弟の物語。都会からやって来た「親戚の男の子」により、彼らの暮らしに変化が訪れる・・・という話。
監督もQAで「人というよりも物」と表した通り、服装や登場の仕方など、親戚の男の子はSFっぽく、「テクノロジー」のメタファーに映る。そして映画はこの「テクノロジー」の登場により、「外界からの隔離」や「父権主義」といった保守的で古い価値観の終焉を描いているように感じた。

これだけ書くと、社会派の映画と思われるかもしれないけれど、今作は「人間の内面」を描く点でも秀でている。
「魅力的な川も、流れが速くて危険な一面がある」という主旨の父親の台詞に集約されている通り、人間や自然が内に秘める「美しさ」と「残酷さ」に今作はアプローチしている。例えば、仲の良さそうに見える5人の兄弟にも、実は互いに言えない秘密があることなどは、まさにその象徴のように感じた。

強いアート色の中に、確かなストーリーが感じられる、見応え充分の傑作でした。『世界の優しき無関心』よりも好き。
劇場公開は厳しいと思う(昨年の『スヴェタ』も未公開だし!)けれど、「芸術貢献賞」あたりは取る可能性があると思うので、興味のある方は最終日のアウォード上映をぜひ狙ってみて下さい!
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