しゃもじお兄さん

ジェミニマンのしゃもじお兄さんのレビュー・感想・評価

ジェミニマン(2019年製作の映画)
3.8
まさに驚異の映像体験。しかしデジタル映像時代のハイフレームレートの技術的進歩は、劇映画、映像フィクション表現のパンドラの箱を空けてしまったかもしれない…

いやぁ〜 わざわざ MOVIXさいたま まで行って3D・2K、そして肝心の120fpsで堪能致しました!

本作最大の特徴は、ウィルスミス主演であることでも、クローンSFであることでもない。それは120fpsという凄まじいフレームレート(コマ数)! 一般的な映画が24fpsという1秒間に24コマのパラパラ漫画であるのに対し、本作はなんと120コマ!5倍!この映画の情報を聞いてからフレームレートについて調べ直しました。また本来のスペックの120fpsでの上映は一般のスクリーンでは対応しておらず、対応しているMOVIXさいたままで遠征してきました。

個人的には、今作視聴以前はYouTubeで60fpsの動画や、家電売り場の最新テレビで流れるハイフレームレートの映画がを観たことがありました。

はっきり断言すると、120fpsでの普通のシーン(会話シーンなど)とアクションシーンでは全く違った感触がありました。それでも両者に共通して言えることは、普通(24fpsの映画に比べ、いわゆるパンフォーカス的に画面内のあらゆる物体全てに焦点が合い、細部まで見えており、またカメラの移動や被写体の移動に伴う像のブレが驚くほど無いということ。

まず普通のシーンについて、これはいわゆるヌルヌル動く映像。歩いたり、立ち上がったりがヌルヌル。そしてなんだかなん安っぽい。まるでアサイラム製のTV映画のような陳腐な画面に、ホームビデオのようは質感。とても臨場感とポジティブに表現する気になれない。またカメラワークからは、カメラの動きやカメラマンの存在を強烈に意識してしまう。

そして肝心の120fpsアクションシーン、これは別次元。複数箇所のガンアクション、バイクチェイス、格闘シーンがありました。これはほぼ"この世"の視覚でした。こればっかりは実際に体験しないとわからない。今我々が観ている視界となんら変わりのないヴィジョン。再生速度を早めているせいか、ヌルヌル感や滑らかささえ感じないレベル。しかし、アクションゆえに早回しを使っていたので超現実感はある。

ちなみに初アン・リー作品でした。前述のハイフレームレートという凄まじい映像表現がありながら、監督お得意らしいPS4の最新ゲームのカットシーンのようなCG使いも存在し、まさにデジタル映像時代の最高峰な作り手。

特にお気に入り要素は120fpsでのガンアクション。作戦中の特殊部隊についてって密着取材しているかのよう。銃器のカスタムもタクティカルで、敵からハンドガンを奪って後にマガジンを抜くのだけでなく、スライドを引いて薬室の弾を抜くという徹底ぶり。

登場する特殊部隊のボディアーマーやマスクのデザインが地味にカッコ良かった。

また後景化していた、オリジナル老ウィルvsクローン若ウィルというクローンSF的な面白さも後半にはしっかり効いてくる。

ウィルスミスの若返りCGは、自然に見える瞬間とキモく見えるシーンがありました。

メアリーエリザベスウィンステッドはかわいい。

ツッコミどころは、ジェミニ(双子座)という計画名でクローン計画であることは察せそうだし、若ウィルには自らがクローンだとバレて欲しくなさそうなのに、老ウィルの暗殺を頼むのは論理が面白すぎる。自らの出生の秘密を乗り越えて欲しい的なことは言ってたけど、そのショックが反乱の元になったやんけ笑 まぁ作劇上しかたない。

しかし結論としては、今後の映画が無理にハイフレームレートにする必要ないと思いました。我々が24fpsに慣れ過ぎているのか、ハイフレームレートが高度すぎるのかわかりませんが、映画の面白さの奥底にある絵画的・静止画的な美しさを破壊しているように感じました。