幽斎

ジェミニマンの幽斎のレビュー・感想・評価

ジェミニマン(2019年製作の映画)
3.6
GEMINI「ふたご座」。本作の構想は古く90年代後半まで遡る。無名のシナリオ・ライター、Darren Lemkeのプロットが原案。それは誰もが知る有名俳優を視覚効果でヒーローと悪役の二役同時に演じるアクション映画。このプロットをTony Scott監督が気に入り、1995年にディズニーで映画化。しかし、テクノロジーが追い付かず頓挫した。因みに主演候補はClint Eastwoodだった。

Lemkeはその後「シュレック フォーエバー」(観てないけど(笑)で脚本家として長編デビュー。プロットはその後も多くのクリエーターがリライト。中には映像派Andrew Niccol監督も。2016年に中国の会社に買収された「ミッション:インポッシブル」のスカイダンスが権利を買い、中国のフォスン・ピクチャーズがAng Lee監督を指名、当初から中国の公開を念頭に作られた。だからBenedict Wongが出演、そして無理くりカンフー登場(笑)。Jerry Bruckheimerはアリババ(阿里巴巴)の太鼓持ちに過ぎない。

初週の成績が約22億3000万円、中国で約23億円、制作費と宣伝費で計250億円。歴史的大惨敗でもWill Smithには20億円のギャランティーが支払われた。中国が損をするのは大歓迎だが、制作過程を見て思うのは、ハリウッドが構築してきた「スター・システム」は既に崩壊、その句読点的作品。昔はSmithの一枚看板で集客出来た。私も彼の作品は大好きだった。しかし、今のハリウッドは既に構築されたキャラクターと、それで続編を量産するフランチャイジーで、自ら首を絞めてる。私はTom Cruiseが引退したら、スター映画は終わりだと思ってる。映画に詳しくない人でもTomなら知ってる。しかし、彼ほどの認知度の俳優は、もう居ない。

見所はコスト高の理由でも有る「4K3Dハイフレームレート撮影」。一般的な映画が毎秒24フレームに対し、本作は120フレームで撮影。これは人間の視覚が認知する速度とほぼ同じで、従来の映画に無いリアリティを感じる事が出来る。しかし、120FPSの映像を体験出来るのは、日本では3館のみ。その1つ梅田ブルク7で観ましたが、確かに没入感は凄い。一般の劇場では半分の60fpsまでダウン・グレードして上映。因みに全てに対応した劇場は北米に1つも無い(笑)。本末転倒と言うより、中国の会社はLee監督に騙された。前作「ビリー・リンの永遠の一日」も一部ですが同じ撮影方法で映画界初の試み。4K ULTRA Blu-rayのラスト12分の迫力は画質だけでコレクションに値する。

どうだ、凄いだろうとLee監督がドヤ顔してそうですが、私はそうは思わない。既に私達の身近には同じ映像を自宅で体験出来る、それが「プレイステーション4」ソニー株主として実に誇らしい(笑)。今のゲーミング・テクノロジーは完全に映画を凌駕してる。そもそも本作の脚本は「メタルギアソリッド」と瓜二つで、訴訟に発展するレベル。コナミ、今からでも遅く無い(笑)。武漢ウイルスのせいで発売が遅れそうですが次期「PS5」は更に8Kが実装される。下記でソニー公式PVが御覧頂けます。なるべく高画質に上げてご覧下さい。ローンチタイトルの中で私のお薦め⇒ https://www.youtube.com/watch?v=Jv4BjWoB-NA どうでしょう?映画と何ら遜色ありません。一方本作はあれだけ大金を注ぎ込んで「まぁ王道のアクションだな」と言う感想しか出てこない、映画ファンとして正直ツライ。

旬を過ぎたプロットを最新技術で映像化しても感動は生まれない。生まれて来るのが遅過ぎたのだ。
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