80年代のサイゴンを舞台にした雑多でレトロ感溢れる雰囲気の映像が、終始独特の美しさで魅せる。
印象的なカットも多く、映像のセンスがとても好み。
そして昭和の日本映画を観ているような懐かしさも感じた。
武骨で寡黙な借金取りのユンと、伝統歌舞伎の花形役者として情熱を燃やす青年リン・フン。
あるきっかけで出会った二人が、最初は反発し合いながらも次第に心を通わせていく。
食堂でガラの悪い連中に絡まれたリン・フンを助け、敵をボコボコにやっつけるユンがしびれるほど格好いい。
ユンの家で二人がテレビゲームに熱中する場面が、少年のようでとても微笑ましく可愛かった。
互いの身の上話をしていく中で、お互いの心にある悲しみに共感し、共有し、孤独な魂同士が引き付け合っていく。
心を頑なにしてヤクザな稼業を続けていたユンは、リン・フンと一緒に過ごすことで、初めて心に安らぎを得ただろう。
そしてリン・フンも、ユンの心根の優しさに触れて初めて知る感情があっただろう。
それは友情と言うより、愛に近かったかもしれない。
儚く散ったボーイ・ミーツ・ボーイの物語。
渡せなかったプレゼントがとても哀しくて切なかった。