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海抜のBigsのレビュー・感想・評価

海抜(2018年製作の映画)
3.5
映画から読み取れる、作り手の姿勢は高く評価したいと思います。
ただ、過去のtiffスプラッシュ部門選出作品(「プールサイドマン」、「かぞくへ」、「鈴木家の嘘」等)と同等のレベルかというと疑問。

卒業制作という予算的にはミニマルであろう作品で12年の歳月というロングレンジの物語を描こうと挑戦した点、なるべくセリフではなく映画的に語ろうとした箇所が多かった点は評価したい。
特に終盤以外はセリフの応酬はだいぶ抑えられていて、力量ある役者さんがなかなか起用できないというウィークポイントをうまくカバーしてたと思います。一方、終盤はある二人が感情を表に出した会話が続くため、この力量だとかなり違和感というか作り物感が際立ってしまったように思う。

ラストの展開は主人公がかなり自分勝手に思えた(自分が話してすっきりしたいという感じに見えた)ので、泣いてすっきりしてなんとなく解決したように見えたけど、実は何も解決してないし気持ちの整理なんか全く付いていない、という終わり方で良かったと思います。そんな風に話をして決着が付くような簡単な問題では全くないし、なんならもう絶対に元には戻れない不可逆なことにさえ思えた。それだけ、発端となる事件が残虐であると。
ラストカットも投げ出したような終わり方であり、映画内では決して閉じないようにしていたようで、この問題に対する作り手の誠実さが伺えた。

ただ、要所要所でどうもチープだったり、嘘くさい(役者の力量的問題)場面があり、素直にのめり込めなかったのも事実。あと、会話の場面になると途端に会話"だけ"にフォーカスが当たっているように思えた。会話しながらも各々の人物の動き等で、並行して何かを語るということもできたと思うけど。

監督さん自身はまだまだ若くこれからという感じだと思うので、今後も是非撮り続けていってほしい。しっかりとした予算を与えられたときにどうなるか観てみたい。
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