"月極オトコトモダチ" (2018)
祝 DVD & Blu-ray 化!
MOOSIC LAB2018長編部門グランプリ
加えて その他 4冠受賞した作品
哲学的テーマを軸にしつつ
非常にポップ・コミカルに展開される
「今までありそうでなかった感じでニュータイプの恋愛映画」ともいえる
この作品のテーマ
>恋愛感情を飛び越えろ。
・年齢が上がると異性の友達が出来なくなる
・異性間の友情は存在するのか
『ロングバケーション』の脚本を書いた
北川悦吏子氏は興味深いフレーズを残してる
>男女の友情っていうのは、すれ違い続けるタイミングもしくは、永遠の片思いのことを言う
1人だけの意見を一般化するのは御法度であり
偏見のような捉え方にもなってしまうけど
ある一説の意見として
"異性間の友情は存在しない"
とも考えられる
現に今作もストーリーが進むにつれて
客観的にみても友情の域は超えている
ストーリーのターニングポイントとなる
柳瀬が那沙の家に行って看病する場面
>通常はしないからね
特別なことをしているシークエンスから
両者の接近と共にストーリーは進展する
風邪を引くシーンに如実に描かれている
" 愛がなんだ " /18 でも書いたけど
ストレスは如実に心身に現れる
主人公 那沙は既に柳瀬に対して
友情なのか恋なのか葛藤しちゃってる
それが "風邪症候群'' というストレスで心身に現れてる
このストーリーの興味深さとして
那沙の趣味にも面白さを感じてしまう
→ "給水塔"を眺めて写真に収めている
給水塔は傾いているモノや真っ直ぐなモノ
高くそびえたっていて その姿は揺るがない
千差万別の様態を映し出している
那沙は柳瀬のことを
"給水塔に似ている"
と語っている
とある部分で公開されてたけど
給水塔自体が柳瀬の象徴
つまり男性性器(ファルス)のシンボル
那沙は自身について
>30手前、私は傷つかないために開き直る術を見つけた。面倒な女だと思われたほうが楽だった。
・(給水塔を)遠くから眺める方が綺麗
・那沙自身の積極的でない性格
双方が合わさって
"給水塔(ファルス:男性)を遠くから眺める
その綺麗さを快感にしている"
男性に対する潜在的な想いが"給水塔"という
メタファーを通じて表現される
音楽制作を軸とする 同居人 珠希と柳瀬
2人の掛け合いに嫉妬するように
2人を見つめながら背を向けるシーンは
那沙の心情を表していてとても良かった
映画冒頭 那沙の"友達でいる儀式" が描かれる
ex.ハロプロが好き
ex.彼氏の携帯見たことがある
ex.胸が大きくなる機械を使ったことがある
突発的なシーンであるために
最初は意味が分からず「?」となる
伏線回収となる後半に同じシーンが描かれる
あの儀式は柳瀬と距離が近づいていき
那沙が更に自己解放(開放)した結果
2人は更に近づいていく
今作は元々 穐山監督の体験に基づくストーリーのブラッシュアップ版ともいえるそう
婚約指輪を渡されたあとに婚約解消した結果
内容証明が送られてきた件は実話とのこと
この映画の面白さはまだあって、、、
柳瀬が発するセリフに表されている
>「言葉って記号みたいで記号じゃない。受け手によって解釈が変わる。」
このセリフを聞いたときにハッとして
スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールを思い出した
"ラング・パロール"
"シニフィエ・シニィフィアン"
これらの概念の中で
・モノの概念が存在してそれに名前が付けられているのではなく
・人がそのモノを認知する記号によってモノが分類され構造が出来上がっていく
と発見している
この映画の那沙のベースカラーは"赤"
"赤" と聞いたときに人が思い浮かべる概念は様々
血・トマト・洋服・りんご etc.
それは受け手のイメージにより変わる
進展する関係性に言葉を上手く使えない2人は"記号"に操られる
2人が操られつつも 磁石のような感じで
なんだか観ていて妙に心地良かった
ラストの展開については
あの形で良かったと個人的に思う
>恋愛感情を飛び越えろ。
これを体現するための長い助走のような形が本編
そして
ラストで「ここから始まっていく感じ」
それこそが この映画の醍醐味