銀色のファクシミリ

月極オトコトモダチの銀色のファクシミリのネタバレレビュー・内容・結末

月極オトコトモダチ(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『 #月極オトコトモダチ』(2019/日)
劇場にて。まずは興味を惹かれるタイトル。そのタイトルに負けない内容の恋愛映画でした。ムージックラボ2018長編部門グランプリは伊達じゃない。男女間に友情は存在するのか? という永遠のテーマを今の切り口で描いた傑作でした。

主人公はWEBマガジン編集部の望月那沙(徳永えり)。「男女間に友情は存在するのか」をテーマした記事のにアイデアを練っていたが、ある日、レンタル友達で生計を立て、かつ「男女関係にならないスイッチ」を持つと語る柳瀬草太(橋本淳)と知り合う。

那沙は、柳瀬に身分を隠して「月極オトコトモダチ」契約を結ぶ。男女の関係構築の面倒をすっとばして、自分の全てを受け入れてくれる男友達。そういう設定で接してくれる柳瀬に、那沙は大きな安心感を得てしまう。そして記事も好評を得て、連載が始まった。

しかし病気になった那沙が自宅に柳瀬を呼んだことで、二人の関係に変化が生まれてしまう。那沙のルームメイトの珠希と柳瀬がある共通項で、意気投合してしまったのだ。料金を払って男友達を演じてもらっている自分と、あっさり柳瀬と友人になる珠希を見て、柳瀬との楽しい時間の儚さを知ってしまう。

さらに編集長から、連載のために「レンタル男友達と一晩一緒に過ごしてもなにも起きないか?」を検証することを那沙は提案されてしまう…という展開。ああ、そういう話ね、と思わせておいて、そこからもう二段深い物語。人間関係を鮮やかに描き、服装の変化とブルーとオレンジの光彩演出も巧み。

男女の恋愛が絡む関係性を考える、内向的な物語なのですが、那沙の趣味である特徴的な建造物巡りのおかげで、開放的な雰囲気があるのが好印象。柳瀬とのレンタルとはいえ安心感のある関係のなかで、那沙が胸襟を開いて柳瀬に接し、それゆえ彼にも変化がある描き方が良きでした。

那沙と柳瀬の間に生まれた確かな感情。それゆえにラストにお互いが選んだ二人の関係。ネタバレになるので、ふせったーで書きますが、「男女間に友情は存在するのか」という問いへの素晴らしい締めくくり。近年の優れた恋愛映画のいづれにも引けを取らない傑作だと思います。感想オシマイ。

特筆すべきは、柳瀬役の橋本淳さん。アヒル口男子という特徴、なかなか見ません。レンタルオトコトモダチ、男女関係をオフにするスイッチを持つというキャラクターにふさわしい、圧迫感のない穏やかな男友達感。これからさらに活躍の場が拡がりそう。いい映画にたくさん関わって欲しいです。

『#月極オトコトモダチ』ラストシーンのネタバレ感想。
最後の会話で示された、男女間での最高の関係とは。序盤の那沙と珠希で交わされた言葉に大きな示唆があると思えました。
制御できないから恋なんだ。→じゃあ、制御できるのが愛? 最後の那沙と柳瀬がこれなんですよね。最後に互いを求めるように情熱的なキスを交わすのですが、恋愛関係にならないのが良いと、互いに云う。
ただ相手を求めるだけの燃える恋情ではなく、相手のことを思いやれる余裕のある大人同士の愛情を持っている。いわゆる恋人同士という形でない、それでもお互いに想い愛し続けられる関係。それを望んでいるからこそ、那沙は「絶対に付き合わない」と宣言し、柳瀬は「良かった」と答える。
柳瀬はそう望んでいたにも関わらず、一度は「那沙がそう望むなら、自分はいわゆる恋愛関係でもいいよ」という意思で、「つきあう?」と問うたのだと思います。愛する女性のために譲歩を見せる柳瀬、レンタル友達やめても、いいヤツなんだよね。
初監督作品で、この男女の機微を描く穐山茉由監督、只者じゃない。ふせったーでも感想おしまい。
(2019年7月21日感想)

#2019年下半期映画ベスト10
・『#月極オトコトモダチ』
「男女間に友情は成立するか?」という永遠のテーマを描く、近年の傑作恋愛映画のいづれにも引けをとらない傑作。穐山茉由監督の、浅川梨奈主演の新作短編は27日からYOUTUBEで無料配信中ですよ。
(2019年12月31日感想)