面白かった。最高にフレッシュでブラックで、溢れんばかりの才気と愛をスクリーンから受け取りました。
東大卒でありながら人生空欄の鍋岡くん。ふとしたきっかけから近所の銭湯でバイトを始めたのだが、そこで毎夜のように行われていた死体処理を目撃してしまう。『凶悪』や『冷たい熱帯魚』のような陰惨さや、韓国映画に引けを取らないような血生臭さが........と思って構えているとアレレ、なんだか平熱なまま話が転がり始め、妙な笑いが生まれていく。この感じはなんだ。食べたことがない料理のようでもあり、でも舌に馴染んでいく。
銭湯という庶民的な場所を選んだのが素晴らしい着眼。洗い流せるし、燃やせるし、こんな〈殺人向き〉の舞台だったなんてね。銭湯行ったら思い出しそう。っていうか銭湯行きたくなってしまった(不謹慎)
松本くん、最高ですね。テキパキと仕事をこなす姿や、何気ない会話のやり取りはとても自然で。あー、こういうバイト仲間いたいた!という感じがリアル。鍋岡くんと副島さんの距離感にもグッときた。安易な恋愛描写に持っていかない、とても自然体なやり取りが好みだった。東さんの落ち着いたトーンも最高だし、アンジェラちゃんも後半グングン可愛くなってくる。そんな調子で登場人物全員が好きになってしまうという困った映画で、なんなら小寺さんも田中も魅力だらけ。鍋岡くんの両親も素敵だったね。何よりラストの食卓シーンは忘れがたいものになりました。
キャスティングと脚本演出のバランスが見事に噛み合って、最小限のコストが最大限に活かされるという理想的な作品。劇場を出てもなお彼らのことを思い浮かべている。映画との出会いが嬉しくなる一本でした。
くすくすポイント
銭湯の店主の東さんが鍋岡君や松本君に話しかける時、最後にオケ―?って言うんだけど桶だったのね。
鍋岡家の食事風景が何度か出て来るんだけど、大皿料理なのに取り皿無しでダイレクトに食べてた・・野趣に富む食べ方だ。
松本君が銃で撃たれて鍋岡家に運び込まれた時、お母さんがマキロンかけてた。
ヤクザの親分田中がケチャップかけすぎてオムライスが血の海に浮かんでた。
他にもくすくすポイント一杯あります。忘れちゃったけど💦