まめまめちゃん

メランコリックのまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

メランコリック(2018年製作の映画)
4.5
東大法学部卒業後、一度も就職せず目標もなく実家暮らしの和彦。たまたま行った近所の銭湯でアルバイトをすることとなる。しかしその銭湯は夜になると殺し屋が死体を処理する場所となっており、たまたまその事実を知った和彦に転機が訪れる。

きっとお勉強だけできて、大学入って目標を失ってそのまま卒業してしまったんだろうな和彦。私も大学受験で一瞬燃え尽きてたので気持ちわかる(全くレベル違うけど)。モラトリアムのヤバさ、もとはお勉強できたけど今は隔世の感、なんてのが、寝癖を気にしない髪とか猫背とかコミュ障気味な会話などにうまく表現されていたと思う。

同じ日にバイトに入った松本も良かった。彼のアクション。全てを削ぎ落とさざるを得ない生活ぶりを垣間見る後半の会話。必要最低限の思い遣りからこその強い言動。ついでに自分で切ってブリーチしてんのかなって髪型も潔い。とにかく全てが潔いんだ。人殺しはともかくこんな人になりたいと思ったよ。

でも一番胡散臭くて読めない、銭湯の店主・東さんの、最後まで何を考えてるのかわからない薄っぺらい優しさ、残酷さ、結局は自分が一番可愛いダメな大人の演技が素晴らしい。そしてその自分可愛さが図らずも和彦の背中を押す展開が良い。

ラストはほんの束の間の幸せな瞬間に過ぎないであろう霞がかった(に見えた)映像にうっかり涙が溢れて、エンドロール終わりかけでそそくさと退席した次第。

欲を言えば、どんな手を使っても人が殺されたらそれなりに凄絶に汚染されることも描くべきではないかと思ったかな。あの程度の擦り方じゃあ、雑菌はもちろん臭いもとれないんじゃないかなあ。