ワンコ

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実のワンコのレビュー・感想・評価

4.3
【アメリカという国】

ベトナム戦争だけではなく、イラク戦争や、トランプの登場による分断、トランプ支持者・白人至上主義者の連邦議事堂乱入・暴動など暗い部分はあるものの、アメリカという国で感心させられるのは、それを巻き戻そうとする意欲や力が個人や社会に存在していることだ。

民主主義の正義のようなものが、どこかで必ず息づいているような気がする。

最近では、アフガニスタン紛争の最中の米兵の殺害行為を暴くストーリーの「キル・チーム」は、米兵の勇気ある告発をモチーフにしたものだし、イラク戦争の証拠なき開戦を告発したメディアが題材になったのは「記者たち」だ。

この作品は、ベトナム戦争で、多くの負傷兵を救いながら、自身は亡くなってしまったピッツェンバーガーの名誉勲章について、30年を超える長きにわたって、これを請願し続けた元米兵がPTSDなどで苦悩する姿も描かれ、戦争の悲惨さを伝えている。

ハフマンは、元米兵の証言を聞くうちに、自身の為すべきことは何かと自問自答し苦悩するが、背中を押したのは、僕は、彼の家族や元米兵の偽らざる気持ちではなかったのかと思う。

救われた米兵や、無事に帰還した米兵も、自分のミスで味方の砲撃を招いたとか、あんな事を言わなければ、ピッツェンバーガーは助かったのだとか、ピッツェンバーガーが自ら戦地に降り立ってくれて自身は助かったとか、戦後もずっと苦しみ続けていたのだ。

この作品を観たアメリカ国民は何を想うだろうか。
勲章の意味を問い直すだろうか。
戦争の悲劇を考え直すだろうか。
米兵の苦悩に想いを馳せるだろうか。

戦場だった場所は、もともと楽園だったのだ。

もともと、この世界には戦場だった場所などないのだ。

叙勲の場で、次々と立ち上がる人々。

その気持ちは、多くのアメリカ人が共有するものだと思う。

ピーター・フォンダに合掌。
ワンコ

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