にいな

イングリッシュ・ナショナル・バレエ団 アクラム・カーン版『ジゼル』のにいなのレビュー・感想・評価

5.0
ジゼルはロマンティックバレエの代表的な作品でロマン主義がめちゃめちゃ詰め込まれている演目だけど、それをうまく現代に移し替えててすごかった!!二項対立をうまく現代に当てはめてある。(村人対貴族が、工場で働く移民対工場の支配者など)
そしてストーリーが微妙に変えられていてそれもまた納得…いつもジゼルを見るたびに「浮気を暴露したヒラリオンが殺されて浮気したアルブレヒトが助かるのはなぜ」で頭がいっぱいだったけど、ここでのアルブレヒトの救済は「人間は変われる」という考えのもと生まれた展開ってカーンが言っててなるほどなあって思った。彼は子供ができてしまったジゼルを捨てて、ジゼルは責められて殺されたわけだけど、彼はそれを心の底から後悔して自分の命をウィリの手にゆだねたんだよね、結局ウィリたちは彼を殺さないで返すけど、そこが肝心なの…
この版のウィリたちは情があるのも、すごくキャラクターの設定が深くて良いなあ。原作ではただ踊らせて殺すことしかないウィリたちが、自分たちのひとりひとりが持つ復讐のような意思で、怒りを表してる踊りがとても良かったな。だってそもそも人を殺すような幽霊が原作みたいにあんな美しいわけがないでしょ!ズタボロになって、復讐や悲しみやいろんな憎い感情で渦巻くウィリが美しい踊りな訳がない。この作品ではそれが見た目にも踊りにもよく現れていて最高だった。
そしてウィリがジゼルのお腹に杖を立てて、ふたりで消えていくのはきっと、ウィリは彼女に味方したというか、理解してあげたみたいに見えたけど、カーンさんの意図はなんなのだろう…
反省のために機会を与えられたアルブレヒトだけど、そこにさ、自分を成長させようともがくロマン主義の主人公像を感じてうわあ〜〜天才かってなった。アツい!!!
原作をこうやって解釈で変えるの興味深すぎて……芸術はどこまでも面白い…
にいな

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