yukihiro084

靴ひものyukihiro084のレビュー・感想・評価

靴ひも(2018年製作の映画)
4.0
子供は、敵ではない。

靴ひも。イスラエル映画。
舞台はエルサレム。
教科書の時にしか口にしないその
街に住むルーベンは、30年前に、
向き合うことから(逃げ出した)
息子と、一緒に暮らすことになる。
息子が一緒に暮らしていた母親が
死んでしまったからだ。

自閉症スペクトラムらしき息子には、
日々のこだわりやルーティンがあり、
頑固で堅物で昭和の親父のような父は、
息子を引き取ってくるれ施設のOKが来る
ほんの数週間、気乗りしないまま暮らし
始める。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、
本来、同じ神を信じる3つの宗教が
壁を作り、聖地が分断されたエルサレム
に住む、父ルーベンと子のガディもまた、
本来、家族だったはずなのに、
お互いに壁を作り、ぶつかり合う。

子供は、敵ではない。

父のルーベンは、人の話を聞かない。
僕らはもう知っている。家庭でも職場
でも、『後にしてくれ。』のセリフで、
(上手くいった)試しがない。

教科書やニュース映像でしか知り得な
かったイスラエルの人々も、何ら僕らと
変わりない父であり、息子なのだな、と
気付く。そして、もどかしい登場人物
たちの周りには、しっかり者の女性が
いつもいる。何より、亡くなっている
母親の優しさや努力を感じられるのも
素晴らしい演出だ。

映画に国境は見えない。
映画には分断する壁もない。
映画は自由だ。
僕は少し変わっていて、予告編は、
作品を(観た後)で観ることが多い。
だから、シーンも言語も、
観た時に初めて出会える。

あのラスト。
彼の部屋をノックする人はいないかも
しれない。でもでも、だから、彼は、
自分で扉を開けてゆくのだろう。
そして、自分の足でしっかりと、
歩き始めるのだろう。

派手さないけど、良かったです。
ゆっくりゆっくり沁みてきます。

馴染みのレンタルビデオ店。
僕はいつもまず、単館系コーナーの
新作をチェックする。
だいたい一本しかないことが多い。
一週間レンタルがはじまり。

観て良かった。
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