バナバナ

ナチスの愛したフェルメールのバナバナのレビュー・感想・評価

3.3
ジャケットから『ブラックブック』みたいな、女性レジスタンス物かと思って観始めたのですが、
内容は、フェルメールの贋作を11点も描き、ナチスの美術品愛好家ゲーリング元帥にも贋作を売りつけたことで有名なオランダ人画家、ハン・ファン・メーレヘンのフィクションでした。

メーレヘンはフェルメールの贋作を描く9年前に、フランス・ハンスの絵の贋作を描いて、オランダ美術史界の大物アーブラハム・プレディウスに贋作と見破られた、という逸話が実際にあるそうなのですが、
本作ではフィクションとして、妻子も居たメーレヘンがこのプレディウスの若妻に横恋慕したせいで、プレディウスに絵を糞みそに貶され、
一度は画家として成功していたのに仕事が無くなってしまった恨みを晴らすために、フェルメールの贋作を作り始めた…という設定になっています。

冒頭はメーレヘンがフェルメールの絵を切り裂こうとする場面から始まりますが、後半でまたこの場面に戻ってくるまでに、三角関係のすったもんだがあるので、相当かかります。
それに時間軸が、現在から落ちぶれて贋作を研究している場面に突然変わったりと、何の説明も無く急な場面転換が多々あるので、
メーレヘンの話を知らない人には「なんのこっちゃ?」と全く話についていけないと思います。

実際のメーレヘンが凄いところは、チューブの絵の具ではなく、
フェルメールが使ったことがある当時の顔料の素材(鉱石、粘土、金属)を使用して、自分で色を作り出していた事です。
メーレヘンは、鉱物の温め方や酸化の方法など、巨匠たちが生み出した色の作り方を再現し、
フェルメールのタッチで“まだ世に出ていなかったフェルメールの絵(新作)”を11点も描いたのです。
また、古画に走る亀裂や、何百年も経過した絵の具の硬さなど、鑑定される要素も、約4年の歳月をかけて克服したそうです。

評論家のプレディウスとその妻との三角関係は、ただ話をややこしくしただけで、メーレヘンがゲーリングを騙して贋作を買わせるところを中心にしてくれた方が見易かったのにな、
と思いました。
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