朝田

パリの恋人たちの朝田のレビュー・感想・評価

パリの恋人たち(2018年製作の映画)
3.7
フィリップガレルの息子がこんなにもドタバタとした、「純粋に楽しい」映画を作るのは意外だった。見ている時の感覚はトリュフォーに近い。古典的なラブストーリーを思わせる導入から、ミステリー、群像劇へと幾つものジャンルが積み重なって語られてゆくストーリーテリングは軽快。この軽快さは大胆な省略と主人公の内面の希薄さ、つまり妙に冷静な佇まいが生んだものだ。語り口も巧妙。モノローグが主人公の内面を語る機能なのかと思いきや、イヴとマリアンヌのそれぞれの過去をスピーディーに語る演出としても成立させている。カメラワークも、ドキュメンタリー風に揺れる画面で見せるシーンと、固定カメラで見せるシーン、そして大胆に躍動するシーンと単調さを避けるように使いわけられており、計算されている。特に主人公アベルとマリアンヌが夜の道を歩くシークエンスはカットを割らず、二人の姿を一定した距離を保ちながら移動していくが、アベルが大声を張り上げた瞬間にカメラの動きが止まる。これによってマリアンヌの驚きの感情をより効果的に伝えている。75分というタイトな尺の中で幾つものドラマを無駄無く語りきる快作。ただ、ソリッドな演出の中で少々音楽が主張し過ぎるのは唯一気になった。
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