Kazu

第三夫人と髪飾りのKazuのネタバレレビュー・内容・結末

第三夫人と髪飾り(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます



ベトナムの新鋭女性監督アッシュ・メイフェアの曾祖母やその家族から聞いた現実にあった話から着想し脚本されたフィクション。

物語からは想像もつかない美しい情景と色使い、音やライティングにも拘ったとされる映像がとても素晴らしい。

19世紀のベトナムが舞台となる今作、セリフは極端に少なく、登場人物の表情や振る舞いと、監督独自の強い美意識が感じられる映像が語るその内容とは、

男児を産むことが女性最大の務めとされていた時代、
一夫多妻、父権社会を背景に、14歳の少女メイが“第三夫人"として嫁入りをする。

少女はお花で飾られた美しい小舟に乗り、緊張した面持ちで透き通る川面に手をさらす。

富豪の家に嫁ぐと言うのは、この時代のある種ステイタスとでも言うのだろうか?
初夜の儀、処女の証、妊娠、出産
それらは女にしか訪れない、そんな神秘的でもある出来事を極々自然に美しく、女性が通る当たり前の日常として描かれている。

嫁いだ先には二人の夫人が、
夫となるとハンと共に少女メイを出迎える


ここからは私の心の声です(文字にしている段階でもう心の声ではありませんが😓)
感情なしではレビューできません


この状況😱もう複雑すぎて私には理解できない!
14歳、おそらくメイは初潮を迎えたばかりではないか!
そんな子供を嫁にとは、犯罪じゃん!
男を産む事が条件!

あぁ〜なんなんだ〜

いやいや、落ち着け!

この時代は当たり前だったんだよ

 
と、まるで私をリラックスさせるかの様に、画面はとても穏やかで、
早朝の日差しと共に、三人の夫人たちは昨晩何事もなかった様にお互い助け合いながら時を過ごす光景が輝いて見えるから不思議だ。

監督は曾祖母に当時の状況を尋ねています。
「この時代は毎日がとても忙しく、嫉妬などの感情は生まれなかったのよ」と答えている。

大家族の身の回りの世話から家事全般が相当大変だったと。

曾祖母の思い同様、この作品の登場人物には感情的になるシーンが殆ど無く、とても穏やかに描かれている。

しかし後半ラストに向けて、
メイが辛い出産を経て、産んだ子供が女の子だったと知らされたシーンから一気にメイの感情がハッキリと表情にのみ描かれています。

男を産むという役目を果たせなかった落胆、
泣き止まぬ赤児、
破談になった少女の縊死、
黒髪(女の命)をバッサリ切る少女、
これらの場面から汲み取れる女性の辛さや思い。

自分の意見や感情を出せない女が、抑圧されていた時代に自らの意思を示す方法は"死“しかないと思わせるラストシーンが切なかった。


撮影当時13歳だったメイ役のグエンちゃん。
彼女のラブシーンが問題となり、本国ベトナムでは公開4日後に上映中止となった。


追伸
あ、そう言えば2007年に当時柳沢厚労相が「女は産む機械、装置」発言をした事を思い出してしまった。
Kazu

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