どろぬま

第三夫人と髪飾りのどろぬまのレビュー・感想・評価

第三夫人と髪飾り(2018年製作の映画)
4.8
冒頭のシーン。主人公の女の子が、桃源郷のような川を渡り、どこか遠い所から嫁ぎ先にやってくる。

セリフのないまま物語が進行し、主人公からまともなセリフが発せられたのは、5分後くらいだろうか。何も話さず、どこか緊張した表情で佇む主人公のその姿から、情感が漂う。往年の監督が撮ったかのような、落ち着き払った重厚な演出に、「おぉ、これは…」と名作の予感がプンプンする。

しかもそれは、「セリフに頼らず‟アクション”で魅せる」、映画ならではの表現を追求しているから魅力的、というだけにとどまらない。
見終わった後に気づいたのだが、セリフがないのは「映画のテーマ」にも通じている。映画のテーマとは何か。もちろん「意見を述べる権利もない低すぎる女性の身分」だ。

序盤のシーンは、ただシーン自体を魅力的にさせているだけでなく、構造的にも効いている。この序盤のシーンがあるからこそ、ラストの言葉なき反抗がグッとくるのだろう。
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