思わぬ良作に出会えました。
夫が亡くなり保険金は自分と息子の手に渡ると思っていた妻。しかし蓋を開けてみると受取人は夫の愛人になっていた。戸惑いを隠せない妻と自由気ままな愛人のバトルが始まる。
息子チェンシーのユーモア溢れる視点から描かれるストーリー。黒塗りで塗り潰したりイラストを書き出す遊び心溢れる演出が観てて楽しいです。
全編に渡ってパンチの効いた母親の存在感が光り輝いてました。息子の無気力具合と対比するも、その熱血ぶりが凄く面白い。
息子からすると「少しは放っておいてくれ」といった心境だろうが、母親にとってはどんな息子でも愛おしい宝物。愛する夫が自分の元から離れてしまい、今度は息子から距離を置かれている…そんな状況が不安で仕方がない胸の内がダイレクトに伝わってきて胸が痛くなる。
不安定な親子関係を何とか修復しようと不器用ながらサポートする愛人という可笑しな構図がまた微笑ましいです。
前半は人間関係をコミカルに描き、後半に入ると個々の心情を回想シーンを交えながらシリアスに掘り下げていく展開に凄く入り込みました。感傷的な描写が上手くて何とも切なくなります。
17年ぶりの演劇の再演に隠された真相を知った時、心を揺さぶられます。切なさと温かさを見事に共存させた素晴らしいストーリーでした。