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風の向こうへのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

風の向こうへ(2018年製作の映画)
3.0
【オーソン・ウェルズの『路上』】
オーソン・ウェルズが晩年に製作を進めていたが、完成することなく亡くなり頓挫した企画『The Other Side of the Wind』をNetflixが彼の遺したメッセージを基に、脇にピーター・ボグダノビッチを携え完成させた!昨日配信されていたので観た。

『市民ケーン』や『審判』、『フェイク』、『オセロ』と度々登場としては斬新な手法を取り込み、尚且つ《映画》として物語る天才的技術を魅せてきたオーソン・ウェルズは晩年もギラギラしていた。

まず、オーソン・ウェルズがジャック・ケルアックの『路上』を映画化しようとしていた話は有名だが、割と本気で映画化しようとしていたことが分かる。ジャズの即興的なリズムに合わせ、若者の旅が映し出され、ビートニクについて語る。その無軌道で、即興的に映像を繋ぎ合わせ、グルーヴ感を生み観る者に高揚感を与える。『路上』愛読者として、オーソン・ウェルズ映画版を観たかった!と思わせるシーンの連続に圧倒される。

そして、映画の中の世界、映画を作る者の世界、映画を観る者の世界が入り乱れていく。それがどれもカッコイイヴィジュアルで惹き込まれる。

正直、オーソン・ウェルズの良さである「物語をしっかり語りながら、技術革新する」という強みがなくなり、ゴダールのような映像闇鍋になってしまったのは残念だが、インスピレーション掻き立てられる作品であった。
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