タケオ

運び屋のタケオのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.1
家族を蔑ろにした仕事一筋な人生—。90歳となりようやく<家庭の尊さ>に気がついたという、どうしようもない頑固オヤジ(The Mule)。デジタル化の波により自らの仕事すら追いやられてしまった彼がたどり着いたのは、なんと"麻薬の運び屋"だった•••。多くの評論家や鑑賞者も指摘しているが、本作は'実話'を基とした作品であるのと同時に、監督クリント•イーストウッド自身を描いた'半自伝的な作品'である。主人公アールの娘役に実の娘アリソン•イーストウッドをキャスティングしている辺り、この仮説に疑いの余地はないだろう。しかし、本作はそれだけの作品ではない!現代社会で働いている全ての"男"たちに通ずる物語でもあるのだ!「私と仕事、どっちが大事なの⁉︎」なんて台詞をよく聞くが、たしかにその2つの両立は非常に難しい。だが、老後を迎え仕事も生き甲斐も失った時、家族との愛や絆を蔑ろにし続けた男に残るものは一体何なのだろうか?一見するとシリアスな社会派作品のように思えるが、まるで贖罪のように犯罪行為に手を染めていく主人公の姿には自虐的な哀愁とユーモアが漂っており、作品に乾いた陽気さを吹き込んでいる—。"漢の教科書''クリント•イーストウッドから"男"たちへの<ラスト•エデュケーション>のようにも感じられる、なんともコク深いヒューマン•ドラマだ。
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