あおや

運び屋のあおやのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.0
出演作としては2012年の『人生の特等席』、監督兼主演作としては2008年の秀作『グラントリノ』以来10年ぶりとなるクリント・イーストウッド監督主演作品。実話から着想を得て製作された本作は、ひょんなことから90歳の男が麻薬カルテルの運び屋を引き受けるところから始まる。

人生を仕事(外)に捧げ、家族を蔑ろにしてきた孤独な退役軍人アール。離婚や戦争、さまざまなことを経験してきた彼は、マフィアから銃を向けられようとも、自らが薬物を運んでいると気付いた後ですら全く動じることなくマイペースにハンドルを握り続ける。そんな彼が発する言葉はひとつひとつが重みあり、説得力がある。それはマフィア達に向けられるものも然り、ブラットリー・クーパー演じる麻薬捜査官ベイツに向けられるもの然りである。特に終盤の悲壮感に満ちた「時間だけはお金で買えない」という台詞は印象的だ。 

本作のアールは、少なからず役者イーストウッドと重なる部分がある。だからこそ観る者はより入り込みやすく、伝わってくるものがある。それは『グラントリノ』でのウォルト然りであり、どこか作品としても似た雰囲気を感じたところはあった。御年88歳となるレジェンドイーストウッドだが、本作でも背中で、人生で魅せてくれるようないぶし銀の演技を見せてくれた。

家族と仕事。これは人生最大のテーマのひとつになってくると思うが、いくら大金を稼いだとしても“時間は買えない”。本作でイーストウッドが伝えたかった一番の主題は心に染みた。それを肝に銘じた上で、将来は上手にバランスをとっていこう。
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