やま

運び屋のやまのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.1
クリントイーストウッド映画。

90歳のおじいちゃんが運び屋としてギャングの世界に巻き込まれていく。
そして徐々に追い込まれていく様子を描いた今作。

あらすじや予告を見てみるとシリアスな映画を考えてしまうが観てみると、実に開放感たっぷりな画作り、笑えるじいちゃんらしい陽気さ、毒のあるユーモアなセリフの数々などから、観やすい映画として完成されている。

物語の構成も運び屋としての回数と同時に忍び寄る警察の影という具合に分かりやすく面白い。

同時に家族が大切なんだという普遍的なテーマもあり素晴らしい内容であったように思える。



今作イーストウッド自身が主役を演じている事からも彼のセリフや行動からイーストウッド自身の人生、価値観をも想起させられる。

「お金があっても時間だけは買えなかった。」
「インターネットは糞だ」
こんなセリフはイーストウッド自身の言葉を代弁しているのだろう。

同時にここから自分は映画について考えさせられた。

現在映画史において映画は重要な時期を迎えているように思える。それは映画がもはや映画館ではなく、それぞれのライフスタイルに合わせてどこでも観れるようになったということ。Netflixオリジナルの「Roma」が今年度各賞を総なめにしているのも時代を感じる。

そんな時代の中クリントイーストウッドも映画とは何かを考えているに違いなく、「インターネットは糞だ」というセリフには現代の映画に在り方に対しての批判のように聞こえなくもない。

90歳になっても映画を作り続けている彼は映画というモノをまだまだ追い続けているのではないかと。時間がないと焦る彼の姿が浮かんでくる。

ラスト刑務所の中で一人花を摘む彼の姿は、現代に溶け込むことなく、一人孤独に戦い続けるイーストウッド自身の姿に重なる。

警察官に囲まれた際、撃ち殺されることのない展開からは、何となくイーストウッドがまだ死ぬわけにはいかずと映画を作り続ける意志を感じられた。

考えすぎだと思うが、そんな事を思わされる映画であった。
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