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運び屋のdojiのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
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史実をもとにした作品が続くイーストウッドだけれど、フィクションとノンフィクションの混ぜ合わせによる映画的な効果というものを、とにかく作品ごとに拡張しているような感じがする。『グラン・トリノ』以来の監督主演作であるこの作品でも、じぶんという存在のもつコンテクストを大いに映画の中でモチーフとして使い、イーストウッドとしての文脈、そして90歳の運び屋という文脈が交差することによって、映画的な波のようなものが起きてるなあと感じた。

とにかく繰り返し主人公が口にする後悔のことば、それはそのままイーストウッドの心情吐露であることは実際の家族のキャスティングからもわかるけれど、その説得力といい、表情の変化だけですべてを語る、演技なのか素なのかわからない姿にはなんども胸がくるしくなった。それでも常に自己耽溺とはほど遠いほどのユーモアで老人であるじぶんを茶化し、ちゃんとエンターテイメントに仕上げているバランスもすごい。ほんとうに、映画をつくるのがとんでもなくうまいひとなんだなあと、あたりまえのようなことを思った。
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