このレビューはネタバレを含みます
クリントイーストウッドの監督映画はいつも私に言葉を失わせます。
確かに何かを受け取ったはずなのにそれを上手く言葉にできず、もどかしい。
クリントおじいちゃんがハンドルを握ってアメリカの雄大な景色の中を進む姿は、さしずめほのぼのしない/できない『ストレイト・ストーリー』みたいだった。
運び屋の職に手を染めるきっかけが距離を置かれている娘一家の孫娘の結婚式費用だったり、拠り所だったダイナーの営業再開のためだったり、寂しい人が搾取されるパターンの構図に思えてしまっていつ悲しいことが起こるのかと怯えながら観ていたけれど、本作は理不尽な仕打ちにワナワナすることはなく。
むしろ、好き勝手にしたいようにする頑固ジジイの振る舞いでマフィアの若者と打ち解け、クスリと笑えるシーンも多数。(ダジャレじゃないよ)
最後は組織も追ってこられないあの場所で、好きなデイリリーを育てたり、できるだけ面会に行くと言ってくれた家族達ともほどほどに交流しながら余生を過ごすのも悪くないよねと思えるまさかのハッピーエンドで嬉しい誤算。
クリントイーストウッドが俳優業引退を宣言した『グラントリノ』からもう10年。新たな作品が世に出るたびに「これが遺作になるのかも」と覚悟をしてきたけれど、まさかこんなに長いこと引き続き素晴らしい映画を見させて貰えるなんて。ご本人はどう思っているのかわからないけど、まだもう少しあなたの映画が観たいです。健康で長生きして下さい。
《SCREEN6》
配給:ワーナー・ブラザース