140字プロレス鶴見辰吾ジラ

運び屋の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.3
【告解】

「アメリカンスナイパー」
「ハドソン川の奇跡」で
史実のドラマ化に挑み
「15:17、パリ行き」で
史実にリアルを追求した
クリントイーストウッド。

本作「運び屋」は
史実と自身の人生を投影し
そして継承を行った
奇妙なロードムービーとなった。

実際の90歳の運び屋に着想を得て、そして自身の映画人たちとしての人生を荷台に乗せて走らせる仕組みになっている。

トムクルーズの「フォールアウト」がトム自身の贖罪を映画で躍動することで見せたように、本作のクリントイーストウッドは映画にて「告解」をしている。それは映画人として映画の世界に身を投じた自分自身とそして家族について、キャスティングにも娘を起用していることから、「15:17パリ行き」的なリアルの追求が行われている。リアリティラインは、麻薬組織そしてメキシカンマフィア絡みでありながらもストーリー的な人情に溢れていて、捜査官やギャングの恐怖よりも主人公=イーストウッドが今の世界の忙しさや苦境に優しく語りかけるデニーロ主演の「マイインターン」の肌触りに近いロードムービーになっている。強面たちがイーストウッドの虜になっていく姿はとにかく滑稽で暖かい。ついでに美女にも囲まれウハウハ。

最後は家族についての謝罪とそして次の世代への戒めのような語り口から、本作の捜査官としてキャスティングされたブラッドリー・クーパーに追われ、追いつかれるという継承イズムまで画面に抑え優しく涙腺が緩み、百合の花の反復で心の奥の方へと流れ込んだ。