河豚川ポンズ

運び屋の河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.7
90歳近いおじいちゃんの人生訓な映画。
マイケル・ペーニャが真面目な役やってたことが一番びっくりした。

長年デイリリーを育てることに没頭し、家族のこともかえりみないまま90歳になったアール・ストーン(クリント・イーストウッド)。
仕事仲間や界隈では人気者だったが、家族からは嫌われ、娘のアイリス(アリソン・イーストウッド)とはもう何年も話していない。
それでもデイリリーを心の拠り所にしていた彼だったが、時代の波には勝てず園芸業も廃業せざるを得なくなる。
しかしそこに孫娘の結婚式の費用をどうにか工面する必要があったことを思い出す。
家族で唯一の味方でいてくれる孫娘のためになんとかしたいと考えるアールだったが、今はそのお金もなく仕事も行き場も失われてしまった。
すっかり途方に暮れていた彼に一人の男がある仕事の話を持ち掛ける。
それは指定の場所まで車であるものを運ぶだけでお金がもらえるという、いかにも怪しい話だった。
しかしそんなことも言ってられない状況にあったアールは、今回限りだと考えその仕事を引き受けるのだった。


監督・主演がクリント・イーストウッドじゃなかったら観に行ってたかと言われると、正直行かなかったろうなと思うし点数ももうちょっと低かったかも。
ポスターや予告編でのやたらめったら重苦しい雰囲気から、結構大変な目にあったり悲しいトーンの話なのかなと思いきや、大半はおじいちゃんが気楽に麻薬を運んでる映画。
主人公のアールは、良くも悪くも昔の仕事気質の男の典型みたいな人間。
そんな男がいよいよ老い先短くなってきたところで、自分の人生にできてしまった空白を埋めようとし、そのための資金を工面するために麻薬の運び屋を始める。
いくらなんでもいきなりそんなガッツリと犯罪に手を染めていくのかと思ったけど、さすがそこはアメリカ?というべきなのか。
しかしそれでも簡単に埋められない妻と娘との深すぎる溝、ついには唯一の味方だった孫娘にまで見放され、ますます孤独になっていく。
クリント・イーストウッドという人がどんな人間だったのかは、当然自分には知りようが無いけども、アールという人物像に何かしら重ねるところがあるのだろうか。
そしてそのアールを追うのがDEAのベイツ捜査官、演じるのはイーストウッドの愛弟子ことブラッドリー・クーパー。
ブラッドリー・クーパーを前にしてイーストウッドはどんな演技を、どんなメッセージを送るのかというのは個人的な見どころだった。
確実にイーストウッド2世なコースを歩んでるブラッドリー・クーパーだし、まさにこの映画で言うアールのような仕事人間になりかねなさそうだしね。
娘役には実際の自分の娘のアリソン・イーストウッドを呼んでくるあたり、キャストを演じる自分の人間関係と近い人を選んでそうだし、そいうところはやっぱりリアル至上主義のイーストウッドっぽいかも。

でも実話ベースだからインパクトに欠けるというか、めちゃくちゃ深いメッセージを自分は受けたわけじゃなかったし、画面から目が離せないという感じでもなかった。
「エモい」といったらあまりに淡泊すぎるけど、そういったしんみりした寂しさのような雰囲気が終始漂ってる。
まあいつかまた歳をとってから観たら、また印象や感想も少し違ってくるのかな。