Kamim

運び屋のKamimのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.8
イーストウッド作品はグラントリノが最も好きで、張り詰めた映画の空気にこちらも背筋がぴりりとする感覚(2時間ぶっ続け)がとても良かった。こちらは同じイーストウッド監督主演の映画であるが、時折笑ってしまうようなシーンも多々あり、緊張と緩和が心地よい。

家庭を顧みず仕事に打ち込み、家族から愛想をつかされている様子はイーストウッド自身の回顧なのか・・とにかく哀愁漂う。

自分のすべきことを全うしてきたはずなのに、時代にも乗れず、誰も自分をほめても、喜んで迎えてもくれなくて、唯一自分に好意的なのは孫だけという悲しさ。冒頭からある意味泣ける。

そんな所に危ない仕事が転がり込んでくることで人生変わるわけだが、移民をこき使ってた爺(しかもTHEアメリカのイーストウッドが)が移民にこき使われるという逆転が面白い。
しかも爺らしいマイペースさを発揮して、移民達とちょっと仲良くなっちゃうのも楽しい。

20世紀の教育と生き方をしてきたからか呼吸するかの如く差別発言する爺だけど、この交流を通して「今はそんなもんなのか」と言いながら、黒人、移民、同性愛・・現在の人の在り方を理解していく姿があり、これも良かった。

家庭を顧みず働き続けた爺が、新しい仕事で人とのコミュニケーションや物の見方を再確認しながら、最後は自分の家族に帰ってくる、っていうのはすごく愛にあふれる映画だと感じた。

そしてこの人もTHEアメリカ、ブラッドリー・クーパーも好演でした。ありがとうイーストウッド。次回作があることを期待しながら。
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