90歳のアール・ストーンは、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきたが、商売に失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった。
クリント・イーストウッド版『ブレイキング・バッド』とでも言っておこうか。主人公のキャラクターは『グラン・トリノ』よりもめんどくさい戦争帰りのジジイだが、ほとんどクリント・イーストウッドの自戒的作品といってよいと思えるほどクリント・イーストウッド自身の状況や性格を反映しているように思う。
ぱっとみの印象は、仕事のために家族を犠牲にしてきた男が、人生をやり直して家族との絆を取り戻そうとするも、さらなる苦悩に堕ちる話のようにしか見えないが、観進めてみると全く違う映画であることに気がつくという変わった一作。本作は大掛かりなギャグなのだ。
全体を通して主人公のアールがかなり浮かれた親父で、オフビートなギャグを連発してくるのもそうなのだが、暗い話と思いきやラストパートに救いがあり過ぎるのがオチというコメディのようなエンディングが描かれているのが本作の特徴。
家庭のために仕事を投げ出しても仕事の方は意外となんとかなるし、逮捕されて外での評価は失うことになるものの、家族に優しくしたことによって家族は味方でいてくれるという、拍子抜けするようなエンディングは、クリント・イーストウッド自身の願望やifのようなものを描いているように思えるのだ。
アールというキャラクター自体には、麻薬犬が来たときの対処など、なにかトラブルが起きた時にも冷静に淡々と対処する姿はとても知的で、流石昔売れてただけはあるなと感じた。
演技なのかはわからないが、クリント・イーストウッドが背骨かなり曲がって完全にヨボヨボだったので、普通に心配になった。
