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運び屋のRのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.6
おおっ!!! めちゃくちゃ面白かった!!! 何となしに、ハラハラドキドキのタイトなサスペンスなんだろと思ってたけど、予想外にコメディやった! 主人公は監督イーストウッド御本人が演じる90歳のお爺ちゃん。こんな老人が映画の監督して主役も張るって激レアだよね、イーストウッドすごすぎ。アール爺さんは朝鮮戦争で戦った元軍人、退役して以来デイリリーというユリの花を育てる仕事に没頭し、地域の品評会では優秀賞をゲットしたりして、みんなからチヤホヤ。おまけにものすごいプレイボーイなので常時レディースをナンパモード。そんなこんなで、家族をないがしろにして、ずーーーーっとマイペースで生きてきたアール。家族は愛想を尽かし、もはや彼などいないものとして暮らしてる。そんな彼もインターネットの普及によって需要を奪われ、家も農園も差し押さえられて、大ピンチ! そんな折、若い男たちに、とある荷物の運送の仕事を任される。彼らがメキシコの麻薬カルテルの下っぱで、運送物が大量のコカインだとは露知らず、ノリノリでその仕事を引き受けることにするのだが……という話で、そこからユーモアいっぱい、ラジオからカントリーミュージックを流しながら、のんびり運送業を楽しむ様子が描かれていく。時々警察に止められたりしてヒヤッとするシーンもありつつ、基本的にはそんなジジイがそんな仕事をしてるだなんて誰も疑わないので、安気そのものやし、カルテル側もジジイの仕事に大満足。道々、タイヤのパンクで困ってる一家を助けてあげたり、ダイクスオンバイクスというレズ集団と出会ったり、と大変に愉快なジャーニー。一方、麻取の捜査ベイツは、いよいよ犯人を捕まえてやる! と取り締まりを強化していくであります。後半はピリッとするシーンも増えていくんやけど、やっぱイーストウッドのすっとぼけた演技がユーモラスで、重い空気になることがまったくない。家族とのドラマもヘビーな割にねちっこさなくサラッと演出してあって、その軽やかさは美事としか言いようがない。あえて言うなら、終盤の家族間の感情的飛躍は、もうちょっと抑え気味の方が良かったなぁと思ったけど、アメリカ人の感情的アップダウンとその露出の激しさを考えると、これはこれで自然なのかもしれません。あと、この映画見て思うのが、この爺さんはそもそも結婚に向いてないんやろーな、と。爺さんが若かった時代は、結婚するのが当たり前で、結婚しないのが異常、って感じだったはず。今は自分が結婚に向いてないなと思えばしなくても大して何とも思われない自由さがあるので、そういう意味では生きやすくなった。まぁ、そうなると、この爺さんが経験したような老年における人生の大変化なんかは経験できなくなるってことやけど。まぁでも人生、常に変化変化やから、家族なくてもいろいろやしねー。とか、そんなことも考えさせられた。てか、こんな爺さんになって若き美女たちにモテモテってどういうこっちゃねん!3Pまでして!笑 けど、それもある程度納得いくのは、イーストウッドの魅力のなせる技なのでありましょう。こういうしなやかさを備えた爺さんに、僕もやがてなれたらいいなぁ、と思いました。笑えるし楽しいし面白くて少し考えさせる、とても良い映画だった。またまたイーストウッドの天才が発揮されてた。枯れることなきインスピレーション。すごい。是非また見たい。
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