阿飛

アートのお値段の阿飛のレビュー・感想・評価

アートのお値段(2018年製作の映画)
4.2
現代アート界の構造(特にセカンダリーの)に興味がある人は必見。
ギャラリー等のプライマリーマーケットの話はほとんど出てきませんが、芸術と値段の関係性は何か、ということに疑問を持っている人に考える機会を与えてくれます。

"The cynic knows the price of everything and the value of nothing."
(冷笑する者はあらゆるものの値段を知っているが、何ものの価値も知らない)
オスカー・ワイルドの言葉です。原題のThe Price of Everythingはここから来ています。
作中にも出てきますが、価格(Price)と価値(Value)の差が理解不能な域まで達している現代アート界バブル。なぜここまで高価格なのか。それは価値に見合っているのか。
作品が不動産と同じく投機的に利用されているというところが状況をややこしくします。さらには社交界に顔を出すためのオークションデビューという利用の仕方も。とはいえ、世の中に生み出された財は様々な要因で値付けがされるわけですから、アート作品も例外ではないというだけの話かも知れません。資本主義社会で活動をする以上逃れられないというだけの話です。
みんな生活があるのだから。(セカンダリー市場のお金がアーティストに回っていないという議論は一旦置いておくとして)

「好きなものを買うべきです」というのが一つの答えな気がします。
その人にとっての価値です。何としても欲しいから、競り落とす。そういう姿勢なら悪くないのかも知れないと思いました。好きなものであれば、値下がりしてもあまり気にならないし、値上がりすれば非常に喜ばしい。作家も、自分の作品が愛されているのであれば嬉しいはずです。
そういう個人の信念や良心で成り立っていて、その人が信用できるから回っている市場なのであればセカンダリーも必ずしも悪ではないと思います。
「好きだから買える」人は幸せですよね。

アートが担っている、担うべきとされている「公共的な価値」が念頭にあるから、違和感を感じる。美術館に慣れ親しんだ人からすると尚更。
実際、作中に出てくる美術館サイドの人も、市場への嫌悪感を隠しません。
こちらの側面はまた別の機会に丁寧に語られる必要があるのではないでしょうか。
美術館も集客の側面を考えていたりもするし、民間は民間で展示の支援をしていることもある。またその展示歴が作品の価格をあげたりしてという入れ子構造。資本主義ですね。

ねぇ、最初のオークションのシーンにウディ・アレンいるよね?
阿飛

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