れもん

映画ドラえもん のび太の月面探査記のれもんのレビュー・感想・評価

4.0
2019年公開の『ドラえもん』の映画シリーズ39作目(「第2期」14作目)。
過去に34作目『新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』、36作目『新・のび太の日本誕生』と良質なリメイク作品を手がけてきた八鍬新之介監督初のオリジナル作品。

ゲストキャラクターの魅力でごり押してくるタイプの作品だったが、中でもルカの設定やキャラクターデザインはずるい。
彼の設定やキャラクターデザインはほぼ渚カヲルだったうえに、恐ろしいことにウサ耳まで生やしていた。
彼には今作を観た幼女の初恋を奪ってやろうというスタッフの意気込みを感じた。笑
ちなみに、のび太のママは月野うさぎで葛城ミサトだがパロディネタは特に無い。

ゲストキャラクターの魅力とともに今作のウリだったのが"エモい"演出だろう。
今作には映画ポスターが複数あり、そのうち「ムーンビジュアル」と呼ばれる6種類が「意識高い系」や「LO」などとネタにされていたのは有名だ。
正直「ムーンビジュアル」をネタにしていた人たちの気持ちもわかるのだが、「ムーンビジュアル」に描かれていたシーンを実際に観ると普通に泣けたし、あのシーンの"エモい"演出は素直に好きだった。

しかし、そういった"エモい"演出をしようとするあまりにキャラクターの行動やストーリーの展開から整合性が失われていたのは残念なところ。
例えば、「バッテリー交換くらい」もできないのがのび太だし、ドラえもんたちが異説クラブメンバーズバッジを手放す必要性も無いはずだが、のび太とルカが一緒にバッテリー交換をして笑い合うほうが"エモい"し、ドラえもんたちとムービットやエスパルたちが二度と会えなくなるほうが"エモい"からそうしたのだろう。

整合性という観点では、異説クラブメンバーズバッジの設定はもはや破綻していたと言っても過言では無い。
直木賞受賞作家の辻村深月を引っ張ってきて脚本を書かせても破綻してしまうのだから、『ドラえもん』で絶妙なSF(すこしふしぎ)を描くのはきっと難しい仕事なのだと思う。

そして、今作でもネックになっていたゲスト声優の存在。
ルナを演じた広瀬アリス、ゴダートとゴダール博士を演じた柳楽優弥の演技は酷かった。
舞台経験の多さが声優としての実力に直結しているのか、ディアボロを演じた吉田鋼太郎の演技は良かったけど。
出番の多いルナとゴダートを本職の声優に演じさせていればもっと良い作品になっていたと思う。

2022年映画鑑賞70作目。

【2022.08.29.鑑賞】
【2022.09.02.レビュー編集】
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